リソ活♡

毎日リソルまみれ

リソルと1年記念日♡

「リ・ソ・ルくん」

「…なに?タヌキ先輩」

「タヌ…」

心の中で「タヌキじゃないもーん!!」と叫びつつ、めげずにリソルに話し掛けるクラウン。

「もうすぐ11月22日だよ。リソルくん、何の日だか覚えてる?」

女性からの「今日、何の日か覚えてる?」と「私、何歳に見える?」という質問に恐怖を感じる男性は多いのではないだろうか。しかしリソルは魔族である。そんな質問に恐怖を感じる事はない。

「…1年365日の中でオレに意味のある日なんてないけど。まさか、タヌキ先輩の誕生日だから祝って欲しいとか?」

「ブブー、残念!正解はリソルくんと主人公ちゃんが恋人になった日でした~」

「…それがなんだっていうのさ。ていうかなんでタヌキ先輩がそんな事知ってんの?」

「企業秘密です♪リソルくん、そんなんじゃ駄目よ。付き合って1年の記念日なんて、ふたりにとって大事な日じゃない。ちゃんとお祝いしないと」

「…それもまた、人間の文化ってヤツ?」

魔族のリソルには意味不明な事ばかりだ。だが、天然王子ではなくタヌキ先輩のいう事なので信じていいだろう。しかめっ面をしながらもクラウンの話を真面目に聞くリソル。

「女の子はね、日頃から小さな不満を溜め込みやすいの。その積み重なった不満を解消できるか、それとも爆発させてしまうかが記念日にかかってるんだよ」

「…主人公がオレに不満?」

主人公がオレに不満なんかある訳ない、と鼻で笑うリソル。だってリソルの前では主人公はいつも能天気そうな顔で笑っている。

「そうやって油断してる人が一番危ないんだから!熟年離婚まっしぐらだよ!」

「…はいはい。ところでなんでこんな事言いに来たの?」

「リソルくんは命の恩人だし、主人公ちゃんにも沢山助けられたし、ふたりには幸せになって欲しいもの。それに人間と魔族の恋愛だなんて、成就したらアストルティアが平和になりそうじゃない。という訳でお姉さんはふたりの事を全力で応援します。それじゃ」

言うだけ言ってさっさといなくなるクラウン。

「…お節介なタヌキ」

リソルは小さくため息をついた。

* * *

そういう訳で今リソルと主人公はオルフェアの町へ向かう大地の方舟に乗っていた。
リソルが主人公に欲しいものがないかと訊いたら「ふたりでのんびり過ごす時間が欲しい」と言うので、記念日のお祝いとして大地の方舟でアストルティアを旅行する事になった。
主人公は「旅行の為に大地の方舟に乗るのは初めて」と言ってニコニコしていた。

オルフェアに着くとチケットを買い、サーカスを観た。演目は玉乗りやジャグリング、空中ブランコなどなど。リソルにとっては初サーカスだ。ちっちゃいプクリポ達のダイナミックな技に思わず驚きの声がもれた。
サーカスの後は近くの売店でオルフェア名物のアクロバットケーキを買って食べた。ケーキを食べながら町を眺めていると、リソルの目に大きなホルンが留まった。

「…あれはなに?」

主人公に訊くと、ビッグホルンについて教えてくれた。なんとあのホルンで町の反対側や月に飛べるという。しかも主人公はカンダタと共に月を救い、お礼に不老不死の秘宝をあげると言われたが辞退したとか。
リソルは不老不死という言葉を聞いて目を細めた。

「…魔族は人間の何倍も生きる。オレは、魔族になった人間の話を聞いた事がある。だからもし主人公が魔族になってオレともっといたいと思ったら教えて。オレにはアンタの…人間の寿命は短すぎるよ」

主人公は困ったような顔で笑っていた。

「…冗談だよ。勇者の盟友のアンタが魔族になる訳ないもんね。さ、次行こ」

お次はジュレットへ大地の方舟で向かう。ジュレットに着くと、潮の匂いと波の音がするのですぐに分かる。ふたりは駅の売店で買ったとこなつココナツを手にミューズ海岸の猫島行きの舟に乗った。

「お待たせしました。猫島に着きましたぜ」

渡し守のウェディのお兄さんの声がして島の方へ目をやると、ジャガーメイジやキャットバット、プリズニャン、ベンガルクーン、キャットフライなどの猫モンスター達の姿が見えた。

「ではあっしは猫苦手なんでこれにて失礼」

主人公は渡し守にお礼を言って手を振った。そして猫モンスター達と戯れようとしたが、全く近寄って来なかった。どうやらレベルの高い冒険者には猫モンスター達は怯えて逃げてしまうようだ。それならばせめて写真だけでも撮ろうと主人公は悲しそうな顔でカメラを取り出した。

「…まったく、アンタっていつも行き当たりばったりなんだから」

リソルはそう言うと、バトルステーキを地面に置いた。辺りにこんがり焼けたお肉のいい匂いが広がった。周りの草木からガサガサ音がして、猫モンスター達が集まってきた。主人公は顔をパッと明るく輝かせて片っ端から猫モンスター達を撫で回しはじめた。

「…上に立つ者は下々の者達の望みを把握して巧いこと操らないと」

猫じゃらしを手に猫モンスター達と遊ぶ主人公を見ながらリソルは満足気に微笑んだ。

「…魔界にはこんな事で喜ぶヤツ、いないよ。ほんとアンタって面白いよね」

気の済むまで猫モンスター達と戯れた後は大地の方舟でレンドアへ行き、グランドタイタス丼を食べ、宿に泊まった。翌朝、ふたりは大地の方舟でメギストリスへ行き、メギス鶏のからあげを食べ、レンタル衣装屋に向かった。

「…なんでレンタル衣装屋?」

訝しげなリソルに向かって主人公は好きなの選んで、と言ってプスゴンきぐるみ券、ゴールドマン衣装券、ナスビナーラ衣装券、サマーウルフ衣装券を差し出した。

「…この中から選ぶの!?4つとも嫌なんだけど!」

リソルが選ぼうとしないので主人公はプスゴンきぐるみ券2枚をレンタル衣装屋に渡した。

「…ちょっと待っ」

リソルと主人公はレンタル衣装屋にプスゴンきぐるみを着せて貰った。

「…なんで!?」

主人公はペアルックが着てみたかったという事と、カジノに行きたいけど盟友がカジノに入り浸っているところを皆に見つかるとマズイからきぐるみにしたと説明した。

「…いや、だからって…。え、しかもこれでカジノ行くの?」

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主人公は嫌がるリソルを引きずって大地の方舟でラッカランへ行き、カジノへ向かった。
ふたりはスロット、ポーカー、ルーレット、すごろく、ビンゴ、スライムレースを一通り楽しんだ。
夕方、お腹が空くと、ラッカラン名物のコロシアムバーガーを頬張った。やっとプスゴンきぐるみから解放されたリソルは安堵のため息をついた。

帰りは流石に疲れたので、主人公のルーラストーンでアスフェルド学園へ帰る事にした。

アスフェルド学園にリソルを送り、主人公がルーラストーンで自宅に飛ぼうとすると、リソルが「コーヒーでも飲んでいけば」と言って引き留めてきた。

祈望館のリソルの部屋でコーヒーを飲んでいると、リソルが主人公を真っ直ぐな目で見つめながら言った。

「…もうすぐ、魔界行くの?」

主人公は多分、と頷いた。

「…今、魔王がいなくて権力争いで荒れてるから気を付けて。…って言ってもアンタならきっと、争いのど真ん中に巻き込まれるんだろうね」

リソルは諦めたように笑った。

「…もしも危険な目に遭ったら、オレを喚んで。前に、言ったでしょ?人間にも魔族にも邪魔はさせないって。主からの任務もかなぐり捨てて主人公の元に飛んでくから。大体、報告書も主人公のお陰でほとんど出来上がってるしね」

リソルの両手が主人公の手を包みこんだ。

「…この1年、主人公と過ごせて楽しかった。また来年も主人公といたい。だから…無事に帰ってきなよ?」

リソルに抱き締められながら主人公は頷いた。心の中で必ず帰ると誓いながら。