ホビットとエルフがいた部屋からさらに奥の部屋に進むと女王とおぼしき竜がいた。
「私は竜の女王。神のつかいです。もしそなたらに魔王と戦う勇気があるのならひかりのたまをさずけましょう。このひかりのたまでひとときもはやく平和がおとずれることを祈ります」
主人公はひかりのたまを受け取った!
「生まれ出る私の赤ちゃんのためにも……」
「…………………………………」
女王はタマゴを産むと静かに息を引き取った。
主人公はそっとタマゴにさわってみた……。やすらかな寝息が聞こえたような気がした……。
女王の部屋を出ると、把握した様子で
「タマゴは私たちが大事に育てていきますわ」とエルフが、
「おいたわしや女王さま!ついに女王さまはお命とひきかえにタマゴを。ああ女王さま!」とホビットが言った。
「私達、大変な時にお邪魔してしまったのね。さあ、行きましょう」
主人公達は竜の女王の城を後にした。
聖鳥に乗りギアガの大穴へ向かう。
ギアガの大穴の側で混乱し冷静さを失った様子の兵士が主人公達に話しかけてきた。
「大変だ!ものすごい地ひびきがしてひびわれが走ったのだ。なにか巨大なものがこの大穴を通っていったようなのだ!そして私のあいぼうがこの穴に……ああ!」
穴は漆黒で満たされていて落ちたらどうなるのか全く分からなかった。
ただ、禍々しい気配は感じる。
主人公はごくり、と唾を飲み込んだ。
漆黒を見つめ意を決した様な顔の主人公を見て兵士がさらにパニックになった。
「お、おいまさかキミ!え?アンタ達も!?」
主人公が飛び込みリソルも続く。
「あ!?え!?なんで!?うわわわ」
「よ、よし、私も!」
ネロも飛び込んだ。
「ひっ……」
「くそっ!ここまできたらもうどうとでもなりやがれ!」
カンダタも。
「うわあああ!?」
見ていた兵士は半狂乱だ。
「ア、アイツら正気じゃない……」
※ ※ ※
「おや?またお客さんか。そうか!あんた達も上の世界からやってきたんだろう!ここは闇の世界アレフガルドっていうんだ。おぼえておくんだな」
「ここから東に行くとラダトームのお城だよ。あのね、父さんが船なら自由に使っていいって」
とんでもない高さから落下したはずなのに無事で、しかも主人公達を見つけた親子から船まで頂いてしまった。
もしかしたら人生の幸運を全て使い切ってしまったかもしれない。
「……なーんて、ゾーマを倒すまでに使い切っちゃこまるんだけどね。それにしてもここは一体何なのかしら……」
この世界の黒く淀んだ空と海と大地を見ていると気分が沈んでくる。
「安心して。主人公とオレ、この世界に来るの3回目だから」
「え!?」
「はあ?!なんだって?!」
「さっきの親子の話が本当ならだけど。……ああ、でもやっぱり……ラダトームの城だ。間違いないよ」
親子から借りた船から遠くの方に小さーく見えてきた城を見てリソルは言った。
「ど、どういう事??」
「そんなのオレだって知りたいさ。なんで3回もここに連れてこられてきたのかさ」
ラダトームの城下町に着くと上の世界で見てきた誰よりも暗い顔をした人々の姿が目に入ってきた。
「魔王は絶望をすすりにくしみを喰らい悲しみの涙でのどをうるおすという。われらアレフガルドの人間は魔王にかわれているようなものなのか……」
そばにいた剣士の男がぼそぼそと独り言みたいな声で呟くように言った。
「この世界にいるとここのやつらみたいに覇気が無くなっちまいそうだな」
「そうね……あまり長居はしたくないわね。うーん、お城に行ってみましょうか。王様もあんな感じなのかしらね」
とりあえず城の兵士に話を聞いてみる。
「この国は精霊ルビスさまがつくったと聞きます。しかしそのルビスさまさえ魔王の呪いによって封じこめられたそうです」
「ルビスって確か前に聞いた事あるよね?」
リソルの言葉に主人公は頷いた。
「私達の世界では多分聞いた事ないわ」
「だな。ねえな」
玉座の間に着き、主人公達は王様と大臣にゾーマを倒しに来たと説明する。
「これまであまたの勇者が大魔王をたおさんと旅に出た。しかし帰ってきた者は誰もおらぬ」と大臣は深い溜め息をついた。
「うん?見ぬ顔じゃな。そうかそなたらもまた上の世界から来たと申すか。わしがこの国の王ラルスじゃ。わしの所に来るまでに人びとの話からおおよそのことは聞きおよんでいるであろう。もはやこの国には絶望しか存在せぬ……。しかしもしそなたらが希望をもたらしてくれるというなら待つことにしよう」
王様は力無く4人に言った。
皆と一緒に王様の面前から下がろうとした時、リソルはある事を思い出した。
「そうだ。ねえ王様、このラダトームの城にさ、たいようのいしってヤツ、ない?」
「はて?たいようのいし?そんなものあったかのう?ふーむ。ああ、もしかしたら城の地下にあったかもしれないのう。そなたらが大魔王を倒すというのなら持って行くがよい」
玉座の間を出、城の地下に心当たりのある様子の主人公とリソルについて行くネロとカンダタ。
「あら、こんな所に階段が?」
「ほう!いかにもって感じだな!」
だがしかし。
「なに?たいようのいし?そんなものはここにはないぞ」
いかにもお宝がありそうな地下室のいかにもお宝の番をしてそうな老人の口から「無い」と言われてしまった。
「はあ!?嘘でしょ!?ねえ主人公、ここだったよね?!」
うんうんと力を込めて頷いたが無いと言われた以上ここにいても仕方ない。
「お城の人に訊いてみたり他の部屋も探してみましょ」
4人で手分けして探すが一向に見付からない。城の者も皆知らないと言う。
「本当にこの城の中にあんのか?あー、腹減っちまったぜ」
お腹が空いたカンダタは食べ物の匂いにつられて城の台所へやって来た。
「なあ、残りもんでも構わねえからなんか食いもんくれねえか?」と壁に片手をついて料理人に物乞いしようとしたカンダタは派手に転んだ。
なんと台所の一部に壁が無く、上り階段のある小部屋に繋がっている!
「いてえ!ああ!?なんだここ!?」
「ちょっとカンダタさん!?どうしたの?!」
大きな音と声を聞きつけてネロがすっ飛んで来た。
「え!?まさかこの壁カンダタさんが壊しちゃったの……?」
「ちげえよ!」
「そ、そうよね。壁の破片も無いし砕いたにしちゃ綺麗な穴……というか通路だものね。中はもう見たの?」
「いや、まだだ」
「場所的に食料の貯蔵庫かしらね?まあ一応見てみましょ」
「オレさまの盗賊としての勘だとすげーお宝がある気配がするぜ!」
「ふふふ。そうだと良いわね」
男の人はいくつになっても子どもよね、と少し呆れながら小部屋の階段をのぼると窓がなく松明の明かりのみの薄暗い部屋に樽が2つとベッドが1つと……宝箱があった。
「ほらなー!?オレさまの言った通りだろ!?
」
「開けてみなきゃ分からないじゃない。この城の他の宝箱も魔物に奪われて空っぽだったでしょ?」
「そうだけどよ。よし、開けるぞ!」
カンダタは勢い良く開けようとしたが少し開けた時点で眩しい光が溢れ、目が痛くなってしまい思わず宝箱を閉じた。
「な、なんだァ!?」
「カンダタさん!ゆっくり開けて!」
ネロも光で目が刺されたのか顔を腕で庇いながら言った。
「お、おう。もっかい開けるぞ」
カンダタは目を瞑り恐る恐る再度宝箱を開けた。目を瞑っていても部屋が太陽に照らされた大地のように明るいのが分かる。
「これは……。これがたいようのいし……?」
明るさに慣れて目を開けたカンダタとネロの前にまるで太陽の欠片のように光と熱を放つ石があった。
「たいようのいし、見つけたの!?やるじゃん」
石に気を取られている間に主人公とリソルもやって来たようだ。
「なんか、オレが前に見た時より眩しいような……?王様も前に来た時より昔の人みたいだし、石も新しいのかな」
「よく分かんねえけどこいつがたいようのいしで間違いねえんだな!?それじゃあよ、そろそろひとやすみしねえか?腹も減ったしよ」
「私も賛成。情報収集もしたいし。どこかいい町や村はないかしら。ラダトームの城下町の人からはこれ以上有益な情報が得られなさそう」
「この時代にもあるか分からないけどマイラの村がいいかな」
主人公とリソルの記憶を頼りに一行はマイラに向かった。道中、以前訪れたアレフガルドとは地形や棲息しているモンスターが多少変わっていたが、温泉の香り漂うマイラに無事に着いた。
ネロとカンダタは温泉を初めて見たようで、とても驚いていた。
「これは一体何?不思議な香りの元はこれね?」
「湯気が出てんぞ?!つまりめちゃくちゃあちいかめちゃくちゃ冷てえって事じゃねえのか!?おいじじい、大丈夫か!?なんかの修行か!?」
カンダタに心配された温泉のおじいさんは笑った。
「ほぉっほぉっほぉっ。お前さん達、温泉は初めてか?心配せずとも、入ってみい。気持ちええぞ」
「ほんとかじじい……おお、こりゃあったかくていいな!」
「服が濡れちゃうから足だけ入ろうかな。……あら、気持ちいいわね、これ。私の町でもやろうかしら?……って、あー、私の町、もう無いのよね……」
「大魔王ゾーマにやられたのかの?それは……大変じゃったのう……。じゃが、命だけでも助かって良かったのう。生きてさえいれば何だって出来る。町を生き返らせる事だっての」
「町を……生き返らせる?」
「そうじゃ。それに、生き返った町はきっと、前より強くなって戻ってくるぞい。簡単には壊されない、強い町になってな。ほぉっほぉっほぉっ」
温泉で身体を温めた4人は村の宿屋でご飯を食べ柔らかい寝床でぐっすり眠った。
闇の世界であるアレフガルドには朝は無い為、爽やかな目覚め、とはいかないが、久し振りにしっかり休めたので身体がスッキリしている。
宿で朝ご飯を済ませると4人は村の人々にこの世界の事やゾーマの事を聞き回った。
「やっぱり前回、前々回と同じで、大魔王の城のある島へ行くにはせいなるほこらの賢者が持ってるにじのしずくが必要で、賢者に認めてもらうにはたいようのいしとあまぐものつえが必要みたいだね」
「あまぐものつえはようせいのほこらにいる妖精の女王が持ってるという噂だけど、今は精霊ルビスがゾーマの呪いで封じ込められてしまってそれどころじゃないらしいわ」
「あらくれのやろうがようせいのふえがあれば石像にされたルビスの呪いがとけるって言ってたぜ!」
「ようせいのふえって確か……」
主人公とリソルは顔を見合わせた。そして主人公はおもむろに温泉の近くの地面を掘りはじめた。突然の行動にネロとカンダタは驚いたが、ふえを見つけた主人公にさらに驚いた。
「あなた達って預言者とか超能力者みたいな……本当にすごいわよね」
「なあ、そんならよ、すんげえお宝の在り処とか知らねえのか!?」
「一応、このようせいのふえも、たいようのいしも、値段がつけられないくらい珍しい品物なんだけどね?」
「それは売っちまったらまずいんだろ?ゾーマ倒すのに必要なんだよな?だからそういうんじゃなくて、売っぱらったら一生遊んで暮らせるような宝もんとか、どっかの海賊が隠した秘宝とかさあ」
「そんなの知らないよ。それに今それどころじゃないでしょ。さっさとルビスとやらを助けに行くよ」
精霊ルビスはマイラの村のすぐそばの小島にある塔に封じられているというので、4人は船で向かった。
「こっから見ると結構高え塔だな。像は最上階にあるらしいな。やれやれ、骨が折れるぜ」
「よおし!賢者のレベル上げ頑張るわよ!」
「ああ、そーいや1レベだったか」
「ん、今あっちの方にはぐれメタルいなかった?」
「えっ!?本当ッ!?」
ネロははぐれメタルを追いかけてどこかへ行ってしまった。
「お、おい!ネロ……。あいつ、ひとりで大丈夫かあ?」
「ここの魔物そこそこ強そうだし、1レベの人間がかなう相手じゃないと思うけど。でもどこ行ったか分かんないしこのまま進んじゃお。どっかでまた会えるっしょ」
「おまえ、薄情だな」
「信じてるから」
「物は言いようだな」
ネロの安否を気にしつつ、3人はメイジキメラやラゴンヌ、サタンパピーなどの魔物を倒しながら塔を登っていった。
3階まで登り行き止まりになったがルビスらしき像は見当たらない。
「今まだ3階だよな?外から見た時、もっと高そうだったぜ?」
「登るだけじゃ進めないって事じゃない?」
「はあ?どーゆー事だ?」
と、その時はぐれメタルが3人の足元へ走ってきた。はぐれメタルなのに息が切れているように見えた。
「待ちなさーーーい!!」
ネロだ。あれからずっとはぐれメタルを追いかけ回していたのだろうか。
「ピキーッ!」
追い詰められたはぐれメタルはなんと飛び降りて下の階へ逃げてしまった。
「あーーーっ!??」
逃げられて悔しいと地団駄を踏むネロ。
……というか本当にネロだろうか?
なんだかカンダタ並みに筋骨隆々な肉体をしているような……?
ネロらしき人物は今にも後を追い飛び降りそうに下の階を覗き込んでいるが、床まで5メートル以上ありそうだしただの人間が飛び降りたら無事では済まなそうである。
「バギっ!」
ネロは下の階に向かって呪文を唱えた。
なるほど、風の呪文のバギで落下を和らげようという考えのようだ。
「ほっ!……うわっ!?きゃ〜〜〜〜〜〜ぐえっっっ!」
飛び降りたネロはバギによる竜巻によって空中に放られ壁にぶつかった。
5メートルの高さからの落下の衝撃よりは軽いだろうが背中はかなり強く打ったのではないだろうか。
「大丈夫か!?」
カンダタはひらりと2階へ降りた。
盗賊として身軽な動きが得意なカンダタならではである。
「おいネロ!大丈夫なら返事しろよ!な!な!」
「……だ、大丈夫じゃない……」
「よし!大丈夫だな!」
主人公はカンダタの手を借り、リソルはその間に自力で2階へ降りた。
「ていうかアンタ本当に町長なの?魔物がモシャスで化けて合流……なんてよくある話だからね?」
「な、何でそんな事言うの?」
「だってアンタこんな短時間で体が別人になる訳ないじゃん」
「体が別人……?」
「誰か鏡持ってない?」
「ラーのかがみは城に置いてきちまったしな。ん、そうだ。オレさま愛用の斧で……ほらよ」
カンダタの斧に映った自分の姿を見たネロは目を丸くした。
「え?何これ私強そうっ」
「は?てかアンタ賢者でしょ?そんな脳筋でどうやってゾーマと戦うつもり?」
「バイキルトをしてせいけんづき!」
「それじゃ武闘家でしょ!?あー、ヤダヤダ。こんな脳味噌筋肉のお馬鹿さんと大魔王討伐なんて」
「そんなに褒めないでよ。何も出ないわよ?」
「褒めてないから」
「全くリソルくんは素直じゃないわよね。でも本当にどうして私の体こんなになったのかしら」
「その指輪のせいじゃねーか?」
「これ!?ああ、ちからのゆびわ?そうそう、塔で拾ったからこれをつけてはぐれメタルを何匹も倒して。レベルが上がるたびに筋肉が熱くなったわね」
「ちからのゆびわって確か性格がちからじまんになるとかってお宝じゃなかったか?」
「あら、じゃあそれのお陰かしら」
「いや賢者だったらかしこさ上げないとでしょ!」
「ちゃんと呪文もたっくさん覚えたわよ。ほら、ベホマラー!」
4人のHPが平均30回復した!
「30……?賢者のベホマラーが……?」
「足りなきゃもう1回唱えれば良いじゃない!それ!ベホマラー!……ありゃ」
「MPもう無いとかダッサ。はい、町長お疲れ様。キメラのつばさあげるからおうちに帰れば」
「帰る所なんて!……もう無いのよ。だから私はゾーマをこの手で必ず倒す」
「ふうん。本物の町長に間違いないみたいだね」
リソルはネロに何かを投げて渡した。
「私帰らないからね!?え、まほうのせいすい……?」
「MP無いんでしょ?他に誰が回復呪文唱えてくれる訳?」
「ああ、ありがと……。うん、任せて!バイキルトは切らさないわ!」
「……いい加減その指輪外しなよ。そこの緑の脳筋さんにでもあげれば?」
「はっはっはっ!そんな小せえ指輪オレさまの指には入んねえし、そんなの無くてもオレさまの筋肉は誰にも負けねえ!」
「……早く外さないとああなるよ?」
「ああん!?」
そんな感じで無事4人揃い塔を探索していると、ついに呪いで石にされた精霊ルビスの像を見つけた。
「すげえ……。石でもこう、カミサマっぽいオーラを感じるな」
「主人公さん、ようせいのふえを」
主人公は頷き、どうぐかばんから笛を取り出し吹いた。
よどんだアレフガルドの空気に一筋の光が射しこんだかのように、春の小鳥のさえずりのような軽やかな笛の音が響く。
すると像に無数のヒビがはしったかと思うと中から光がほとばしった。
「ああまるで夢のよう!よくぞふういんをといてくれました。私は精霊ルビス。このアレフガルドの大地をつくったものです。お礼にこのせいなるまもりをさしあげましょう。そしてもし大魔王をたおしてくれたならきっといつかそのおんがえしをいたしますわ。私は精霊ルビス。この国に平和がくることをいのっています」
そう言うと精霊ルビスはアレフガルドの大地へ消えた。
あまりの眩しさに目を開けられず、精霊ルビスの姿を見る事は出来なかったが、だが確かにその声は、その温かさは、4人に届いた。
そして主人公の足元にはせいなるまもりが輝きを放っていた。
「これが……せいなるまもり……」
せいなるまもりを拾い上げると主人公の頭に精霊ルビスとは違う誰かの声が響いた。
「……主……人公……主人公……。聞こえ……すか……?よくぞルビスさまを大魔王ゾーマの呪いから救って下さいました。あなたに渡したいものがあります。ここから南西……メルキドの南のほこらへ……どうか……」
「………………」
「ぉいっ!主人公!!」
カンダタに強く揺さぶられ主人公はハッと意識を取り戻した。
「大丈夫か?どうしたんだ」
主人公は精霊ルビスではない何者かの声が聴こえた事を3人に説明した。
「ルビス様じゃないなら一体誰だったのかしら?」
「ちょっと怪しいけど、大魔王の手下からじゃないよね?」
リソルの言葉に主人公は邪悪な感じはしなかったと首を横に振った。
「何かの罠じゃないといいけど。主人公さんの直感を信じるしかないわね」
「前はメルキドの南にほこらなんか無かったよね?でもまだあまぐものつえが見つかってないし手掛かりも他に何も無いしとりあえず行ってみる?」
「精霊ルビス様とやらを助けた礼が貰えんだろ?善は急げだ。ごちゃごちゃ言ってねえでさっさと貰いに行こうぜ!!」
船に戻り南へ南へ。
聖なるほこらのある大陸の南端から北西へ。
長らく波に揺られようやくメルキドのある大陸に着いた。
「ほこら、見当たらないわね」
「メルキドが山の奥だからね。ほこらも海沿いには無いんでしょ」
「ふっふっふっ」
3人が怪訝な顔で振り向くとカンダタが腕を組んで笑っていた。
「こんな時こそオレさまの空とぶくつの出番だぜ!」
そう言うと地を蹴り空高く跳んだ。
「お、あれにちげえねえ。おーい!!あっちだ!!」
上空でカンダタが指差した方角を進んで行くと苔むし蔦が絡んだほこらがひっそりとあった。
「ここかしら?」
「魔物の気配はしないね」
ぴちょんぴちょんと水がしずくとなって落ちる音がする。
ほこらの中は仄暗かったが、中央は天井に丁度穴でも空いているのか明るい光が差していた。
その光の中、美しい女性が主人公を待っていた様子でこちらを見つめ佇んでいる。
側の従者と思われる妖精が4人に気付き、
「お客様がみえるなんていつ振りかしら。こちらの方は妖精の女王です」
と微笑んだ。
「わたしはその昔ルビスさまにおつかえしていたようせいです。そしてあの日ルビスさまにかわり、主人公の持つエテーネルキューブに棲む時の妖精によびかけたのもこのわたし」
キュルルに!?と目を見開く主人公。
キュルルは消えたはずじゃ……?
「ふふ。人間と妖精はつくりが違いますから。人間の目では見えないものも視えるのですよ。突然な事で驚かせてしまったかもしれません。許してくださいね。しかし主人公はついにここまで来てくれました。わたしの想いをこめあなたにこのあまぐものつえをさずけましょう。どうかルビスさまのためにもこの世界をおすくいくださいまし」
主人公は女王の目を真っ直ぐ見、頷いてあまぐものつえを受け取った。
「これでたいようのいしとせいなるまもりとあまぐものつえが揃った。聖なるほこらの賢者サマに会いに行こう」
4人はようせいのほこらを出、船に戻り、先程の海路をまた通り、聖なるほこらへ向かった。
「聖なるほこらだけはずっと変わらないな」
「他は変わっているの?」
「ああ。町や村が出来てたり無くなってたり。地形も変わってるし勿論人も。魔王城にいるのがりゅうおうからりゅうおう2世になってたのは笑ったな」
「じゃあ今度はりゅうおう3世かもしんねえな」
「いやゾーマでしょ」
聖なるほこらにはやはり賢者の老人がいた。
「よくぞきた!今こそ太陽と雨があわさるとき!そなたにこのにじのしずくをあたえよう!」
「このしずくをどうすんだ?ゾーマに振りかけると倒せんのか?」
「そんな簡単に大魔王を倒せる訳ないでしょ。アンタに振りかけてやろうか?」
「あンだと!?」
まあまあ、カンダタ達は知らないんだからそう思っても仕方ないよと主人公が場を収める。
そして、見れば分かるよと言い、魔王の島の向かいの崖に向かった。
「あれが大魔王の城と魔王の島……」
切り裂くような鋭い音をたてて吹きつける風にネロは身震いした。
「波も魔物のような荒波だし島も崖だし船じゃ上陸出来ないのね。空とぶくつもこの暴風じゃあ……」
「1か月に1回ぐらいすっげえ天気が良い日があって渡れたりしねえのか?」
「はあ〜あ。この暗黒の空を見ててよくそんな楽観的な考えが出てくるよね?ま、見てなよ」
3人は主人公の方へ目を向けた。
主人公は力強い笑みを浮かべるとどうぐかばんからにじのしずくの入った小瓶を取り出し、崖から魔王の島の方へ振りまいた。
しずくは鮮やかな光を放ち、なんと虹の橋が
かかった。
驚きのあまり言葉が出てこないネロとカンダタをよそに主人公は虹の橋を渡ってみせた。
「あ、歩けるの!?虹を??」
恐る恐る、ネロとカンダタも片足を虹にのせる。
「ええ〜〜〜!?嘘ォ〜?!何これ!??」
夢でもみているかのようだ。
「これ、普通の虹みたいに歩いてる途中で消えちゃったりとか……」
「そう思うなら急いで渡った方が良いんじゃない?」
「大丈夫って言ってよ!リソルくんの馬鹿ぁ!」
けらけら笑うリソルに青い顔して走るネロ。
「お、おい!」
カンダタもつられて走る。
魔王の島に着いた4人を稲光が出迎える。
「ついに、大魔王の城……!ネフェロバークの皆の仇……」
「この世の財宝は全てオレさまのもんだ!大魔王なんかに邪魔はさせねえぜ!」
「主人公とオレはゾーマを倒してこの地の平和を取り戻す為に妖精の女王に呼ばれたらしいからね。倒さなきゃアストルティアに帰れない」
「魔王バラモスの時は一緒に戦えなかったけど、今度は一緒よ。皆で……ゾーマを討ちましょう!」
人間の背丈の2倍以上ある大きな扉を開く。
軽く入り組んでいて正面奥にダメージ床に囲まれた玉座が見える。が、しかし玉座は空っぽだ。
「……誰もいない?」
「気配がする。確か玉座の」
「われらは魔王の部屋をまもるもの。われらをたおさぬかぎり先にはすすめぬぞ!」
ごごごご、と音をたて、うごくせきぞう6体が4人を取り囲む。
「きゃ!オバケ!?」
「うごくせきぞうだよ!」
「のわっ!潰される!」
うごくせきぞう6体が徐々に迫ってくる。
「石が相手じゃ鎌も槍も魔法もたいして効かないな」
「そんじゃオレさまが粉々に砕いてやらあ!」
「分かったわ!バイキルト!」
「マッスルポーズ・極!!」
カンダタはマッスルポーズ・極をキメるとスーパーハイテンションになった。
さらにうごくせきぞう達はカンダタに見惚れている!
カンダタは思い切りオノを振り下ろす。
痛恨の一撃!
うごくせきぞう達は粉々に砕かれた。
「流石ね!」
「アンタもたまには役に立つじゃん」
「オレさまの手にかかりゃこんなもんよ!はっはっはっ」
「ふふ。あ、それでさっき、リソルくん何か言いかけてたわよね?確か玉座が?」
「玉座の裏にいつも隠し階段が……うん、やっぱりあった」
隠し階段をおりると迷路や真っ直ぐに歩けない罠などがあり、一行は苦労しながら進んだ。
道中の魔物も強いが魔力を温存する為なるべく呪文を使わず倒した。
いくつ目かの迷路を抜けると、暗闇の中炎に囲まれた祭壇のような所へ出た。
異質な空間に皆気を引き締める。
祭壇には誰もいないが嫌な予感しかしない。
しかし祭壇を通るしか進むべき道がない。
祭壇に上がると案の定ゾーマが現れた。
「勇者たちよ!わが生けにえの祭壇によくぞきた!われこそはすべてをほろぼすもの!すべての生命をわが生けにえとし絶望で世界をおおいつくしてやろう!勇者たちよ!わが生けにえとなれい!出でよわがしもべたち!こやつらをほろぼしその苦しみをわしにささげよ!」
「ギャアアオンッ!」
暗闇から突然キングヒドラが現れ襲いかかってきた。
もえさかるかえんを吐き出す。
「こんなせめえ所で!避けらんねえ!」
フバーハの優しい衣が4人を熱から守り、マヒャドの氷で炎を相殺する。
「やるじゃねえかネロ!」
「皆がここまで魔力温存させてくれたからね!バイキルト!」
主人公の攻撃力が上がった。
「よーしオレさまもっ!」
マッスルポーズ・極!
味方全員スーパーハイテンション!
残念ながらキングヒドラに見惚れは通用しないようだ。
カンダタに噛みつこうと首を伸ばしている。
「ソイツ喰ったらお腹壊すよ?」
リソルの堕天使の轟雷。からのジュエルレイン。
雷で痺れ、宝石の雨に打たれ攻撃の手が止まるキングヒドラの首を主人公が魂狩りで全て斬り落とす。
「一丁上がりッ!ゾーマの奴、どこ行きやがった?」
「待って、しもべ『たち』って言ってたよね?」
「グルゥァオオオンッ!!」
また何もない闇の中からバラモスブロスが現れた。
「ぅわ、おっと、よっ」
突然すぐ側に現れ繰り出された鋭い爪をなんとか避ける。
バラモスブロスのイオナズン。
「マホカンタ!」
「ちっ。シャドウガード!」
ネロのマホカンタもリソルのシャドウガードも1人分、つまり自分の身しか守れない。
「げ、まじか」
身を守る術が無く受け身をとるカンダタに主人公の闇の加護。
カンダタのダメージを肩代わりし、吹き飛ぶ主人公。
「大丈夫かっ!?」
主人公は頷いたが服は大穴があき髪も焦げたのか毛髪が燃えた時の独特の臭いが充満していた。
バラモスブロスのはげしいほのお。
「わりぃ!」
「マホカンタ!これで今度は防げるから!」
「ありがとよ!コイツ、手数が多いな」
「近付くとやられるから遠距離攻撃で。魔眼開放!ドルマドン!」
「ベホマ!」
ネロは主人公の傷を回復した。
「テンション上げてこうぜ!」
カンダタのマッスルポーズ・極。
「スーパーハイテンションで叩きつけてやれ!」
「メラゾーマ!」
「ドルマドン!」
「喰らえ!オレさまの痛恨の一撃!」
そして主人公の根絶やしの重撃。
「グギャアアアアアアッ!」
バラモスブロスをやっつけた!が休む暇なく。
「ウゴォォオアアアアアッ!!」
今度はバラモスゾンビが現れた。
「まだいんのかよお」
ネロはリソルとカンダタの攻撃力を上げ、バラモスゾンビの守備力を下げた。
主人公の暗黒連撃。
目にも止まらぬ速さで5回斬りつける。
「……?!」
「回復してる?!」
バラモスゾンビにつけた傷がみるみる塞がっていく。
「ギシャアアアッ!」
「ひゃっ」
バラモスゾンビの鋭い爪を躱すネロ。
「回復が追い付かない程のダメージを与えないとね」
「そうね」
主人公の必殺、錬魔の秘法!
赤黒い炎を纏い、ダークマター、煉󠄁獄魔斬、厄災の滅撃、根絶やしの重撃など大技を素早く叩き込んでいく。
「守りを捨てるわ!バラモスゾンビはブレスも呪文もしてこないみたいだから皆、攻撃を避けて!モシャス!」
ネロはモシャスで主人公の姿になると同じように激しく猛攻を始めた。
2人の猛攻を受けバラモスゾンビの回復が間に合わなくなってきた。しかしゾンビだから痛みや疲れを感じないのか攻撃の手はまるで衰えない。
「避けろったってな、うおっ、ぬわっ」
「オレが引き付けるからアンタはマッスルポーズでもしてて。シャドウガード!」
リソルはシャドーを呼ぶとカラミティドゥームであえてバラモスゾンビの懐に飛び込みバラモスゾンビの気を引く。
バラモスゾンビに引き裂かれシャドーがはらりはらりとリソルから剥がれ落ちていく。
「くっ……!まだか!?」
「もう一押しじゃねえか!?ええーい、マッスルポーズ・極!!」
「ああっ」
ネロのモシャスが解けた。
「ゼェゼェ……。主人公さん、何て動きなの。私、にはもうこれ以上、出来ないわ。この、燃えなさい!超火力ベギラゴン!!」
そしてリソルの堕天使の轟雷!
主人公の煉󠄁獄魔斬!
カンダタの痛恨の一撃!
バリバリバリバリィッッッ!!!
「グギャォォォォンッ!」
4人はバラモスゾンビを倒した!
「勇者たちよ!なにゆえもがき生きるのか?ほろびこそわがよろこび。死にゆく者こそ美しい。さあわがうでの中で息絶えるがよい!」
再び現れ襲いかかろうとするゾーマへ主人公はひかりのたまを差し出した。
あたりにまばゆいばかりのひかりがひろがる。
ゾーマの闇の衣がはがれた!
「ほほう……。わがバリアをはずすすべをしっていたとはな。しかしむだなこと……。さあわがうでのなかでもがきくるしむがよい」
ゾーマは主人公を手で壁に向かって叩き飛ばした。
ゾーマのこごえるふぶき!
ネロがふぶきから皆を守る。
「主人公!大丈夫か!!」
カンダタが叫んだ。
主人公の体は黒いもやに包まれている。
ゾーマの仕業か……?
なんだか怖気がする。
こごえるふぶきのせいだろうか。
主人公がニヤ、と笑うとその体から赤黒い炎が燃え上がった。
必殺、錬魔の秘法!
ハデスの宴!
厄災の滅撃!
ゾーマは主人公の鎌を受け留めながら問う。
「お、お前は本当に勇者なのか!?何故わしのように闇のヴェールを纏っている!?何故そんなに禍々しい気を放っているんだ!?お前は何者だ!!?まさかお前……」
「そうだよ。主人公はアストルティアの大魔王さ」
「なッ!?」
「えッ!?」
「ああんッ!?」
「嘘、でしょ?私、大魔王を倒す為に大魔王と旅していたの……?」
「話は後で聞こうぜ!今はこいつを倒すぞ!その為にここまで来たんだろ?」
「……。」
「おい!」
「小僧も人間ではないな?魔族か」
「正解。さっすが大魔王サマ♪」
「わははは。伊達に長く生きてはおらんぞ」
「ネロ!避けろ!!」
動かないネロをゾーマが切り裂かんとす。
ガキィィィ…ン
主人公が闇の加護でネロの肩代わりをし守った。
「大魔王……らしくない行動だな。お前は一体なんなんだ?お前みたいなくだらん奴が大魔王?笑わせるな。目障りだ、消えろ」
「ネロ!今までの旅を信じろ!主人公を!信じろ!」
「主人公は勇者の盟友なんだよ。だからアストルティアを守る為に大魔王になったんだ」
「……意味が分からないわ」
「それが主人公なんだ」
「とにかく!わりぃ奴じゃねえんだろ!?おい、こっからテンションMAXでいくぜええ!!」
カンダタのマッスルポーズ・極!
「アイツ、マホカンタしてたから打撃でいくしかないね。ふぶきとか厄介だけど……」
リソルのカラミティドゥーム。
「主人公もガンガンいこうぜ!……あ?」
見ると主人公はネロを守った時の格好のまま動かない。
ゾーマから2回攻撃くらったから動けねえのか。
「ネロはふぶきとマヒャドに備えてっから回復する暇ねえな……。そうだ、HPリンク!」
カンダタは主人公にHPリンクをした。
主人公は急に体が動かせるようになって不思議そうに手をグーパーしている。
カンダタとHPリンクになっている事に気付くとお礼を言い、波動解放し闇のヴェールを再び纏った。
「行けえ!!!」
カンダタのマッスルポーズ・極を受け主人公はゾーマへ煉󠄁獄魔斬、黒炎帝の斬撃、厄災の滅撃、根絶やしの重撃を次々と打ち込む。
リソルもカラミティドゥームや堕天使の轟雷、ジュエルレインを叩き込む。
なんなんだこいつらは!
あの賢者の女はまともそうだが他は大魔王に魔族に、あの緑の筋肉馬鹿はそう言えば聞いたことあるぞ、盗賊だろう!?
勇者は!どうした!
わしはこんな訳分からん連中に倒されるというのか!!
「ふざけおって!」
「くっ……!」
相殺する暇がない。
4人はふぶきに埋もれた。
はずだった。
「バシルーラ!!」
なんとネロはバシルーラでこごえるふぶきを別空間へ飛ばしてしまった!
「なっ……!?」
カンダタのマッスルポーズ・極!
リソルのジュエルレイン!
主人公の災いの斬撃!
カンダタの痛恨の一撃!
「ハアアアッ!!」
そしてトドメは
筋肉ムキムキネロの理力の杖の渾身の一撃。
け、賢者の打撃が最期だなんて、なんという屈辱ッ!
というかマッチョな賢者って何ッ!?
やっぱりこいつら全員おかしいよッ!!
「最期はね、私の『手』で、ネフェロバークの皆の仇をとりたいと思っていたの」
「さっすが脳筋賢者サマ!」
「勇者たちよ……。よくぞわしを倒した。だが光あるかぎり闇もまたある……。わしには見えるのだ。ふたたび何者かが闇から現れよう……。だがそのときはお前達は年老いて生きてはいまい。わははは……わははは……わははは……っ。ぐふっ!」
大魔王に魔族に盗賊に脳筋賢者……。そんな奴らに倒されたなんて恥ずかしいから勇者って事にしとこう……。ぐふっ!
「年老いて生きてはいまい、か。時渡りの力を持つエテーネの民の恐ろしさを知らないんだな」
「……終わったわね。ううん、これからが始まりか。頑張らなくちゃ、ね。皆の分も……」
「……。」
「ねえ、2人はもう元の世界……アストルティア?に帰るの?」
「いつもなら魔王を倒せばエテーネルキューブが帰してくれるんだけど。まさか大魔王ゾーマの上がいるとか?」
「はっはっはっはっ」
「……。」
「……まじ?」
「気配がしないからいないと思うよ」
「分かってるんなら言うなよ!」
「くくっ。まあよく分かんないけどまだ帰れないみたいね」
「それならしんりゅうを倒しにいかない?」
「は?」
「竜の女王の城でね、勇者の称号を得た者は天界に導かれるそうなの。で、しんりゅうを倒すと願い事を叶えてくれるんですって。アストルティアに帰りたいっていうお願いを叶えてくれるんじゃないかしら」
※ ※ ※
4人は竜の女王の城の光の中で天界に導かれ、謎の洞窟やゼニスの城、謎の塔、数々の試練を乗り越えしんりゅうのもとへ辿り着いた。
「オーラ半端ないわね」
「多分、今まで戦ったどの敵よりも強いよ」
「オレさま用事思い出し……」
ネロが笑顔でカンダタを睨む。
「行きましょ」
「おう……」
4人がしんりゅうの前に立つと、しんりゅうは静かに言葉を発した。
「もしこのわたしを打ち負かせたなら願いをひとつだけかなえてやろう。いくぞ。用意はいいか?」
4人は頷いた。
しんりゅうが戦意をあらわにすると空気がびりびりと音がしそうな程張りつめた。
やべえ……。ちびりそうだぜ……!
カンダタはごくりと唾を飲んだ。
しんりゅうのしゃくねつのほのお!
こごえるふぶき!
熱いのと寒いのを一度に!?
防ぎきれない!
やけどと凍傷はベホマラーじゃ治らない!
「異次元の強さだわ……!」
速いし一撃一撃が重い!
りゅう、と聞いていたからドラゴンメイルなどブレスに耐える装備を用意してきてはいたけど。
カンダタのマッスルポーズ・極!
リソルは魔眼開放、ドルマドン!
主人公は蒼月の守り、暗黒連撃。
しんりゅうのイオナズン!
そしてあやしいひとみでリソルを眠りに。
「く……。ベホマラー!ザメハ!」
ザメハでリソルは目を覚ました。
「眠りは厄介だな……」
眠りはシャドウガードでも防げない。
主人公は厄災の滅撃、ダークマター。
が、しんりゅうの闇耐性は下がらなかった。
カンダタは痛恨の一撃。
しんりゅうののしかかり!
いてつくはどう!
「おわーッ!」
あんなデカイ体にのしかかられたら潰れちまう!
ネロははどうで消された補助呪文をかけ直す。
カンダタはマッスルポーズ・極!
リソルの堕天使の轟雷!
主人公は闇のヴェールを身に纏い煉󠄁獄魔斬!
しんりゅうのかみくだく!
しゃくねつのほのお!
「あっぶな!!」
しんりゅうに噛みつかれそうなのを危うく躱すリソル。
ネロはしゃくねつのほのおをマヒャドで相殺し主人公にバイキルトをかけた。
カンダタの痛恨の一撃!
リソルのカラミティドゥーム!
主人公の根絶やしの重撃!
「顔色が全然変わんねえから効いてんのか効いてねえのかイマイチ分かんねえな」
しんりゅうのあやしいひとみ!
ネロは眠ってしまった!
「まずい!」
しんりゅうのこごえるふぶき!
「うあああッ!冷てええ!」
カンダタは主人公にHPリンク!
リソルはシャドウガードで身を守った。
主人公は闇の加護でネロを守る。
「お、お、お、ネローーー!頼む起きろーーー!!」
ふぶきでガチガチになったカンダタはネロを揺さぶったり頬をぱちぱち叩いたり必死で起こそうとしている。
「あれは強力だから簡単には……」
「むにゃ……え!?カンダタさん!??」
「起きた!?」
「起きてくれたかー!!もう二度と寝るなよ、な!な!な!」
「う、うん……?頑張るわ?」
「だから無理だってそれは」
ネロはなんか顔が痛いなと思いつつとりあえずベホマラーを唱えておいた。
しんりゅうのしゃくねつのほのお!
「マヒャド!」
しんりゅうのあやしいひとみ!
しんりゅうはネロを見つめていたが
「そうはさせるかってんだ!!」
カンダタがしんりゅうとネロの間に割って入りネロの代わりに眠った。
ネロはすぐさまザメハでカンダタを起こそうとしたが
「え?」
むくり、とカンダタが起きあがった。
顔は眠っているように見えるが、しんりゅうに近寄るとなんとその尾をむんずと掴み振り回し、しんりゅうの体をあちこちに叩きつけだした。
「えええ?!」
「寝相が悪いどころじゃなくない?」
「ねえ、助けてって聞こえない?」
「はあ?」
「ほら……」
確かに耳をすませるとばしんばしんと叩きつけられながらしんりゅうが「助……けて……助けて……」と言っているような気がする。
「でもこれどうやったら止まんの?」
「起こせば良いんじゃない?ザメハ!」
「ん……?オレさまは……?何だこりゃ?」
目を覚ましたカンダタは手にしていた尾をぽいと放した。
しんりゅうはもう無理、というようにしばらく地面に突っ伏していたが、ぬらりと起き上がると何事もなかったかのように言った。
「みごとだっ!この私をわずか6ターンで打ち負かしてしまうとは……。さあ願いをいうがいい」
そして早く帰ってくれ。出来ればもう二度と来ないでくれ。後でここへ着く道塞いでおこう。
「あれで勝負がついたの?!」
「まあ、良いじゃない。これで帰れるんだから」
「オレさまが寝てる間に倒しちまったのか!?どんな手使ったんだ!?」
お前がやったんだよ、とカンダタ以外の全員が苦笑いをした。
「この2人を、主人公さんとリソルくんをアストルティアに」
言いかけるネロを主人公が止める。
「え?なんで……?」
主人公は「自分達はきっと帰れるはずだから心配しないで大丈夫」とネロに微笑んだ。
「でも……じゃあ、カンダタさん、世界の100大秘宝が欲しいんだっけ?それを……」
カンダタは首を横に振った。
「分かってねえな。お宝ってのはよ、自分の力で手に入れてこそ価値があるってもんよ。それよりもよ、ネロ、おまえには大事な大事な、我が子のように大切にしてたもんがあったんじゃねえのか」
「それはもう、永遠に失ってしまったのよ」
「無くなったもんでもどうにかしてくれるんがしんりゅうさんじゃねえのか?」
「!」
「やり直したかったんだろ?今度は上手くやれっといいな」
「ゔう……。あ"りがとう……」
ネロは大粒の涙を流しながらしんりゅうに願いを伝えた。
「 」
「ではネフェロの町ネフェロバークにもどるがいい」
その時、主人公のどうぐかばんから緑色の光が溢れ出した。
「お迎えの時間が来たみたいだ」
「ここまで付き合ってくれて、ありがとう」
「おまえらといると世界を救っちまったり柄でもねえ事しちまうからな。ま、おまえらとの冒険はオレさまにとってもトップクラスの宝もんって事にしといてやらあ!どっかでもし会ったらよろしくな!な!な!」
主人公とリソルの姿がまばゆい緑の光に包まれ……消えた。
「ありがとな。楽しかったぜ」
※ ※ ※
緑の光の渦を抜けると、そこは祈望館のリソルの部屋だった。
流石に、今回の旅は疲れたな。
「ねえ、アンタだったらしんりゅうに何を願う?」
うーん、何が良いかなー。
「オレは……」
※ ※ ※
「1人じゃ怖いからお願い!一緒に来て!」
「構わねえぜ。オレさまも、あのしんりゅうがインチキ野郎じゃねえか気になるしよ」
※ ※ ※
「ねえ!カンダタさん!どう!?ねえったら!」
カンダタに先に町を見てもらい、自分は門に隠れていたのだが、カンダタが返事をしてくれないので仕方なく町へ足を踏み入れる。
「あ……あ」
町は建物から何まで記憶の通り元に戻っていた。
「あ、あ……」
「町長!帰っていたんですか!?」
「おかえりなさいませ、ネフェロ町長」
「実はですね、非常に言いにくいんですけど、私達不満がありまして。あのですね、もっと休みを……」
「あ、あああ!そうね!皆の就業について今一度話し合いましょう。私も丁度、あなた達を働かせ過ぎじゃないかと思っていて……」
「本当ですか!?」
そう。
今度こそ私は大事な大事な、我が子のように大切なこの町を守り抜いてみせる。
皆がくれたこのチャンスを、絶対に無駄にしない。
町人達と再び歩き出したネロの背を見送り、カンダタもお宝を探しに森の木の葉の囁きの中へ消えていった。
今度は安心して酒が飲める町にしてくれよな!な!な!
★あとがき★
ついに完結しました!
3年?4年?くらいかかってしまいました。
ドラクエⅢはⅠやⅡと比べるととんでもないボリュームで
あまりにも長くなってしまうので町などを半分ほど
カットしてしまいましたが、そのカットした部分…
ピラミッドや1日王様体験などのほうが
ドラクエⅢの魅力がより伝わる気がします( ;∀;)
ノーカットでいつか書き直せたらなどと
淡い夢も抱きましたが長過ぎて完結させられない
かもしれませんね(;_:)
このお話はドラクエⅢの商人があまりにも
可哀想だなと思って書いたお話です。
こんな終わり方なら希望が持てるんじゃないかなぁ。
今回のお話でリソルとドラクエナンバリングコラボは
終了の予定です。Ⅳ〜はボリューム多いしキャラが
立ってて横入り出来なそうなので笑
主人公が喋らない設定で書くのは大変だったので
これからはもう少し自由に書きたいです笑
体力があれば挿絵を追加していく予定です!
というかいつか漫画にしたり朗読劇を
やってみたいんです!
今はリソルの声が出せるかどうか特訓中です!笑
最後まで読んで下さった方
ありがとうございましたm(__)m
あなたが読んでくれる、楽しみにしててくれている。
そう思えたから最後まで書けました。
まだまだ書きたいものは沢山あります!
よろしければこれからもお付き合い下さい(^ν^)
それではまた\(^o^)/