リソ活♡

毎日リソルまみれ

フウキ委員怪談せよ!

セミが……鳴いてる?

いや、暑過ぎてセミすら鳴いていないかもしれない。

そんなあつ〜〜〜〜い夏を涼しくするものと言えば?

 

「そう……怪談よ!」

 

「シュメリア先生、突然どうしたんですか!?」

 

急に大きな声で独り言を発するシュメリアに驚くミラン

 

「ボケが始まっちゃったんじゃない?」

 

「そうそう、歳を取るとどうしてもね……ってまだそんな歳じゃないわよ!いつも通り失礼ね!リソルくん!」

 

「まあまあ。それで、階段がどうかしたんですか?」

 

「ほら、夏といえば水遊びに花火に……。色々フウキの皆で楽しんだじゃない?でもまだ怪談はやってなかったなって」

 

「ああ、そちらの怪談でしたか」

 

「今度、夜に皆で集まって怪談をやりましょう!許可は先生が取るわ!」

 

「良いじゃねえかシュメリアちゃん!」

 

「アイゼルは好きねそーゆーの。あたしは苦手……」

 

「タヌキ先輩大丈夫?トイレついて行ってあげようか?」

 

「安心して下さい、クラウンさん!オバケなんて私のオノで真っ二つにしますから!」

 

「オバケに同情するよ」

 

「かいだん……?」

 

「オバケの話をするのじゃよ。怖い話を聞くと鳥肌が立つくらい涼しくなる……のかの」

 

「じゃあ、メルジオルの話する!」

 

「こらラピス、わしをオバケ扱いするでない!」

 

「ふふ。フウキ委員、今夜7時に旧校舎の空き教室に集合せよ!」

 

 ※ ※ ※

 

その日の夜7時、旧校舎の空き教室。

部活動も終わり広大な学園の敷地内にはほぼ誰もおらず真っ暗で静かだ。

埃っぽい空き教室にフウキ達の立てる物音だけが響く。

 

「そういえば私、霊感が無いのでオバケが見えないかもしれません。クラウンさん、もしいたら教えて下さい」

 

「あたしだってオバケなんか見たくないよー!あーん、帰っちゃおうかな」

 

クラウンはフランジュに引っ付いている。

 

「今帰るならタヌキ先輩1人で帰る事になるよ?旧校舎も確か出るんじゃなかったかなー、オ・バ・ケ。ククッ、寮まで無事に帰れるといいけど」

 

「リソルくんの意地悪ー!」

 

「リソルくん、その辺にしてあげなさい。主人公さんは用事があって来れないそうよ。さあ、全員揃ったし始めましょう。フウキ委員、怪談せよ!」

 

 

「俺からでいいか?生徒会のOBから聞いた面白い話があるんだ」

 

「OBから、というのがリアルですね。お願いします」

 

ミランはアイゼルの方へ身を乗り出した。

 

武道場の倉庫には絶対に2人以上で入れって言われてるだろ?それはな、まだ学園が出来て間もない頃、1人の女の子が部活終わりに倉庫で片付けをしていたらな、まだその子が残っている事に気付かずに鍵を閉められてしまったんだと。そしてそれが運の悪い事に長期休暇の前でその女の子はそのまま……」

 

「あの、クラウンさん、腕を握られているといざという時オノが振るえません」

 

「出る前提なの!?」

 

「それからは倉庫から『助けて』って声が聴こえるようになったって噂だ。んで、それから何十年も経った頃、そうした事件を何も知らない女の子がまたしても1人で武道場の倉庫で片付けをしていたんだそうだ。ただ、倉庫の鍵はその女の子が持っていたらしい。ところが!」

 

「クラウンさん、あの、爪が食い込んで痛いです」

 

「ごめんねフランちゃん!」

 

「カチリ、と音がしてひとりでに鍵が閉まってしまったんだ。女の子は驚き持っていた鍵で開けようとしたが何故かどうしても開かない……。」

 

「痛いですクラウンさん」

 

「ごめん!」

 

「なんと、数十年の間に悪霊になった女の子が鍵が開かないように押さえていたんだ」

 

「きゃーーーー!!」

 

「痛っ!つねらないで下さい!」

 

「幸いにも、女の子が鍵をまだ返しに職員室へ来ていない事に気付いた先生が様子を見に来てくれて女の子は無事に救出されたそうだ。そんな訳で今でも武道場の倉庫は1人で片付けるなと言われているらしいんだ」

 

「悪霊、やっつける!」

 

ラピスが立ち上がった。

 

「今!?」

 

「これは怪談だし、本当だとしても倒しに行くのは後にしようラピス」

 

「そうそう落ち着いてラピスさん。まあ、それほどアイゼルくんの怪談が上手だったって事ね。次にやりたい人はいるかしら?」

 

「では僕が。昔、アストルティアのどこかの砂漠の王国の王子様が、夜な夜な城をこっそり抜け出して城下町で身分を隠して遊んでいたんだ。そんなある日、王子は城下町でブラックレディと呼ばれる、ベルベットのような腰まで届く黒髪に黒い肌、夜空のような漆黒の瞳で黒いドレスに身を包んだ美しい女性に出逢った。ブラックレディは始め、全く王子に見向きも返事もしなかったが、毎晩毎晩あの手この手で気を引こうとする王子のあまりの熱意に根負けし、徐々に心を開いていった。ついに王子が身を明かし、ブラックレディにプロポーズをすると、なんとブラックレディはそれを受け入れた。しかし、王子が喜びいっぱいにその件を王に報告すると、王は『そんな雑草のような女との結婚は認めない。お前はこの国の繁栄の為にも隣国の姫と結婚するのだ』と、反対されてしまった。それならばと王子は駆け落ちしようとひとりブラックレディの元へ向かうが、そこには息絶えたブラックレディの姿があった。ブラックレディは王子をたぶらかした庶民の女として王様に暗殺されたのだった。王子が泣きながらブラックレディを抱き上げると、下から現れた真っ黒なサソリが逃げていった。それからというもの、王族が砂漠に近寄ると黒いサソリに襲われるようになったという。王族しか襲われないのは、そのサソリがブラックレディの生まれ変わりで、王族の事を恨んでいるから……と城下町の人々の間で噂されているそうな」

 

ミランくんのお話、全然怖くなかったわ」

 

「どうしてです?」

 

「おどろおどろしい場面も無かったし、あたしは王族じゃないから襲われる心配無いもん」

 

「ああ、僕はこの話を聞いた時とても怖かったのですが、そうですよね。なるほど」

 

「サソリ……おいしい?」

 

「食用ともされているようじゃが毒があるし危険じゃ!捕まえようとしてはいかんぞ!」

 

「そうよラピスさん。はい、次は誰が挑戦する?」

 

「聞いてるだけじゃつまんないし、オレの話も聞かせてやるよ」

 

「じゃあリソルくんお願いね」

 

「ベルヴァインの森の奥深く、夜の一番深い時間になるとフードを被った白いローブの人影が現れるんだ。それが毎年決まったある1日だけ、赤くなる。なんでだと思う?」

 

「着替えたんじゃねえか?」

 

「別の人なんじゃない?」

 

「その日だけ特別なんじゃないでしょうか?お祝いとか」

 

「何か知らせたい事があるんじゃないか?」

 

「赤い月が照らす……?」

 

「魔界とて月は赤くないじゃろう」

 

「がっかりナデシコが惜しかったね。お祝いじゃなくて命日。その魔道士が殺された日になるとその時の血でローブが真っ赤に染まるんだ」

 

「っ!」

 

「赤いローブの魔道士を見た者は、その日家に帰ると家の中が血だらけになっているんだ」

 

「ひっ」

 

「うわ」

 

「だから魔道士の命日には森に入らない方がいいよ。まあ、呪われる訳じゃないけどね」

 

「わー、リソルくんしっかり怖いじゃない!やめてよ!」

 

「僕たちは魔界に行かないだろうけど、主人公にはその魔道士の命日を教えてあげておいた方が良いんじゃないか?」

 

「気が向いたらね」

 

「え、やだ本当の話なの!?」

 

「うふふ、リソルくんも上手ね。さて、まだやりたい人いるかしら?」

 

「はい!私にやらせて下さい!」

 

「どうぞフランジュさん」

 

「ええと、これは師匠と依頼を受けながら各地を転々と旅していた時の話なのですが。ある晩、野宿で師匠は先に眠りについていて、私だけなぜだか寝付けない日があって。そうしたら森の中からガサガサと音を立て盗賊が現れたんです。師匠を起こそうとしましたが全く目を覚ましてくれなくて、私がひとりでオノで追い払いました」

 

「盗賊もアンタにはさぞかしびびっただろうね」

 

「朝になり目的の村に着きその盗賊の話をすると、皆さん大変驚かれました。その盗賊は前に村で盗みを働いたそうなのです。そして村人に見つかり逃げている際に崖から転落して亡くなってしまったと。村の皆さんの話によると、私達が昨晩休んだ場所がその崖の近くだったらしいので、霊として現れたのではないかとの事でした。この話を聞いた村の神父さんが崖でお祈りをして下さったので今はもう出ないそうです。いかがでしたか、私の怪談」

 

「フランちゃんの頼もしさが増したわ」

 

「だな。フランジュ、お前すげえな」

 

「怖くはなかったですか?」

 

「フランジュ、かっこいい!」

 

「うむ、それほど怖く感じなかったかの」

 

「やはりもう少しオノさばきについて説明した方が怖かったでしょうか!?」

 

「そこじゃないから」

 

「フランジュさん、オノさばきは説明して貰わなくても目に浮かぶわ。さあ、次話したい人はいるかしら?」

 

「じゃああたしが。前ね、こんな事があったのよ。その日は美術の授業で絵を描いていたの。でもあたし、あんまり絵を描くのって得意じゃなくて。授業だけだと提出期限に間に合いそうになかったから持って帰って寮でも描こうと思ったの。秋だったから日没が早くて美術室に向かった時はもう真っ暗だったわ。校舎内に人もあまりいないし。あたしの靴の音がやたら大きく聞こえた。それでね、美術室に着いて明かりをつけたらね、部屋にあった彫像がゴゴゴゴって音をたてながらあたしの方を向いたのよ!あたしは悲鳴をあげて逃げた。勿論絵は期限に間に合わなくて最低の評価がついたわ」

 

「クラウンわりぃ。それ俺だわ」

 

「え!?」

 

「去年の秋だろ?俺、美術部の奴からコンクールの手伝いしてくれって頼まれてて放課後に彫ってたんだ。急に明かりがついたと思ったら女の悲鳴がしてあの時は俺もびっくりしたぜ」

 

「なんだ、アイゼルだったの!?明かりくらいつけなさいよね!」

 

「夢中でやってたらいつの間にか暗くなっててよ」

 

「あらあら。残るはラピスさんね。何か良いお話は見つけられたかしら?」

 

「夏……夜の旧校舎。まっくら、だれもいない。わたしたち以外。だれかが走ってくる」

 

ばたばたと廊下から誰かがこの部屋に向かって走って近付いてくる音がする。

 

「現在進行形の怪談かよ!?」

 

「やだこれオバケなの!?嘘でしょ!?」

 

「クラウンさん任せて下さい!私が斬ります」

 

「オバケって斬れんの?」

 

足音はこの部屋の前で止まった。そして扉が勢い良く開かれる。

 

「ハアッ」

 

フランジュがオノで斬りかかる。

 

「うわッ!?」

 

フランジュのオノはよけられた。

 

「あ、れ?」

 

フランジュは二撃目を振るおうとして動きを止めた。

 

「主人公さん!?」

 

主人公がフランジュのオノをよけ尻餅をついていた。

 

「斬りかかってすみません主人公さん!今日は来れないはずじゃ?」

 

「用事が早く済んだから急いで来たんだ。皆に会うの久し振りだし」

 

「そうですよね、お久し振りに会えて嬉しいです!あああ、本当にすみません!」

 

「連絡してなかったし驚かせちゃったよね。ごめん。でもまさか斬られるとは」

 

「アンタが変なタイミングで来るからだよ」

 

「主人公さんも怪談する?」

 

「是非!その為に来たんですよ。ではいきますね。学校の怪談……もとい学校の階段は、段数がいつもより多ければそれは最後の余分な段が死体だとか、逆に少なければ異世界に踏み入れてしまうだとか噂があるそうですね。先程、この旧校舎の2階は空き教室に来る途中に階段をのぼったんですけど、本当なら30段のぼって踊り場があってまた30段なんですけど、30段のぼって踊り場の後、29段しかなかったんですよね。急いでたから数え間違えたのかもしれないんですけど」

 

「気付いてしまったのね。可哀想に」

 

シュメリアのメガネが光った。

 

「え?」

 

「黙っていれば無事に帰れたかもしれないのに……。フウキ委員、主人公さんを異世界の住人にせよ!」

 

リソルが指をパチンと弾くと教室の扉にカチリと鍵がかかった。

 

「えっえっ……うわあーーーー!!!」

 

アイゼルが主人公の右腕を、ミランが左腕を、クラウンが右脚を、フランジュが左脚をロックした。

ラピスの長い毛髪が主人公の首に絡みつき絞め上げる。

 

「う、ぅぐう」

 

喉がしまり声が出せない。

意識が遠のく主人公が諦め目を閉じようとしたその時。

 

「なあんちゃって〜!皆、もう良いわよ!」

 

主人公を捕らえていた全ての力が解かれた。

 

「……?」

 

「じゃじゃーん!」

 

混乱する主人公の目に入るメルジオルの持つ「ドッキリ大成功!」の看板。

 

「????!」

 

「少しやり過ぎたのではないか?声も出せぬようじゃぞ?」

 

「ちゃんとメルジオルで練習した」

 

「わしは首が無いからのう。加減が違ったかもしれぬの」

 

まだ訳が分からない様子の主人公にシュメリアが説明する。

 

「ごめんなさいね。主人公さんが全然私達に会いに来てくれなくて寂しいからリソルくんが懲らしめてやろうって」

 

「そんな事言ってないから!」

 

「主人公さんはがめついから怪談の最優秀者にはマイタウンメダル500枚贈呈って言えば死んでも来るからってリソルくんが」

 

「先生のくせにそんな嘘ばっかついて良い訳!?」

 

「ええ……!?じゃあマイタウンメダルが貰えるっていうのは嘘ですか?!」

 

「そうよ。ごめんね」

 

がっかりする主人公。

 

「巨大化してさっさと宇宙人片付けてきたのに……」

 

何かブツブツ言っている。

 

「ごめんな主人公。リソルが寂しかったみたいだぜ。まあ、俺も寂しかったけどな」

 

「うるさい脳筋

 

「ごめん主人公。リソルに頼み込まれて仕方なく手伝ったんだ。でもアストルティアの偉大な冒険者のキミのこんな驚く顔が見れて楽しかったよ」

 

「王子サマも楽しんでんじゃん」

 

「ごめんね主人公ちゃん!リソルくんが痩せる薬くれるって言うから。本当に効くのかなぁ?主人公ちゃんも飲んでみる?」

 

「自分で使うっていう約束は破らないでよ?タヌキ先輩?(タヌキに変化する薬だからね。ククッ)」

 

「はいはい。お姉さんは可愛い後輩との約束はちゃんと守りますよ」

 

「主人公さん……この度は汚い手を使って申し訳ありませんでした!リソルさんにどうしてもと頼まれまして。今度は正々堂々真っ向からお手合わせしましょう!」

 

「がっかりナデシコに頼むのが一番大変だったんだよ……」

 

「主人公ごめん。次、リソルにやる?」

 

「ラピスがリソルにやり返すかと提案しておる。いいのかラピスよ?リソルからいっぱいお菓子を受け取っておったじゃろう?」

 

「メルジオル言っちゃだめ!」

 

「ったくドラキー女め。マカイマカロンをあれだけ発注するのどれだけ大変だったと思ってるんだ」

 

「は、はは……」

 

アストルティアを救う為になんやかんややった後にこれだったものだから(バージョン6.5前期)どっと疲れに襲われ主人公は床に倒れ込んだ。

 

「主人公!?」「主人公さん!?」「主人公ちゃん!?」

 

遠のいていく意識の中で主人公は心に固く誓った。

リソルに二度と寂しい思いをさせまいと。

(こんな目に遭うのはもう懲り懲りだよ!)

 

             ★おしまい★