(※主人公とリソル付き合ってません)
(ちょっとピュアめなリソルくんです)
(※いつものお話とは世界線が違うお話)
「今思うと、地元の夏祭りって若い学生達の為にあったのかなって。
好きな人を誘う勇気なんかないけど、お祭りで会えるかもしれないって思いながらお洒落して。
あの人はどんな服着てくるだろう?誰と来るんだろう?
不安と期待で胸をいっぱいにして慣れないヒールや浴衣で祭りの会場を端から端まで歩くんだ。」
なんだそりゃ。
好きな奴がいるなら誘えよ。
ソイツが他の女と来たらどうするんだよ。
夏祭りの資料として図書室から借りてきたその本を投げる。
……こちとら誘いたくても誘えないってのに。
リソルは深い溜め息をついた。
先日、たぬき先輩がフウキの皆でグランゼドーラの夏祭りに行かないかと提案してきた。
学園の駅から乗換なしで一本で行けるしと。
いつもなら「いいね!行こう!」という流れになるがこの時は違った。
おバカ会長が主人公の方をちらっと見て
「悪ぃけど先約があってよ」
と断ったのだった。
主人公も「その日はちょっと用事があって」と断り、オレもアイツが行かないのなら、と「オレもパス」と言って断った。
残りのメンバーで行こうかたぬき先輩は少し悩んでいたが
「未来のアラハギーロ王が女の子3人とハーレム状態でお祭りに来てたらまずいかな。やめとこっか」
と言って諦めた。
そんなやり取りがあった後に主がどこからそんな事を聞いてきたのか
「今度グランゼドーラで夏祭りというものが開催されるんだって?リソル、ちょっと調べて来てよ」
と手紙を寄越してきた。
祭りの浮かれた空気の中をひとり任務で彷徨わなきゃならないのかと思うと頭痛がしてきたが、主の命令であれば断れない。
なんとなく嫌な予感がしていたが仕方なくリソルは駅のホームへ向かった。
※ ※ ※
グランゼドーラの祭りは勇者姫の地元というだけあって盛大で華やかだった。
その賑やかさでひとりでいる孤独が余計に際立つ居心地の悪さといったらない。
そんな中、よく知った気配を感じた。
へえ……。アイツも来てるのか。
グランゼドーラに来る前に読んだ本の内容を思い出す。
アイツもめかしこんで来てんのかな。
アイツの勝負服、どんなのだろう。
想像すると笑ってしまう。
どうしてか、是非見てやろうという気持ちになってしまって感じる気配を頼りにアイツを探す。
よし、この辺だな。
さあ、アンタの勝負服、見てやるよ。
果たして、リソルは主人公を見つけた。主人公は白いTシャツにジーンズと白黒のスニーカー。
そしてその隣には長身でがたいの良い赤い髪の男……アイゼルがいて、主人公と同じ服を着ている。
勝負服にしちゃ随分ラフだけどこれはペアルックだかおソロコーデとかいうやつか……。
!?
なんだ!?
胸が締め付けられるように痛い!
息が苦しい!
呪いか!?
しばらくアストルティアにいて何事もなかったから油断していたが魔界から刺客が送り込まれていたのか!?
突然の胸の痛みに混乱したがやがてハッと気付く。
ああ、これは呪いなんかじゃなくて……。