リソ活♡

毎日リソルまみれ

アラモンドであら、魔族

「そろそろ11月22日だねえ。リソルと付き合って何年だっけ?忘れちゃった!」

 

おいおい、数百年以上生きる魔族のオレが覚えてて百年ぽっちしか生きられない人間のアンタが忘れてんのかよ。4年だよ4年。

 

「今年は何しよっか。去年は魔界旅行だったね!リソルは何かしたい事ある?」

 

何ってそりゃあ勿論……。

 

「私に首輪買いたいってのはナシね。今アストルティアで流行ってないし。戦ってる時に引っ掛かったら危ないし」

 

「あっそ」

 

主人公も流行りとか気にするんだな。

ていうかオレがしたい事そんなんじゃないし。

 

「そうそう!そう言えばこの前アストルティアでリソルと行きたい場所見つけたの!」

 

キラキラと目を輝かせて言う。

ホント、アンタはいつも楽しそうだな。

 

 ※ ※ ※

 

記念日当日。

祈望館のオレの部屋まで迎えに来た主人公のメガルーラストーンを借りて着いたのは。

 

「あらぁっ!可愛いボーヤ♡おねえさん、ボーヤになら何でもしてあげちゃうっ♡どぉ?おねえさんとぉ、イ・イ・コ・ト、しなぁい?」

 

「よぉ!アンタ、また来たのかい?今度アタイとも走ろうぜ!」

 

「あああああ〜〜〜〜ん!ネコチャン!どちたの?ねむねむなの?かわいいでちゅね〜〜〜〜!」

 

「オラァッ!何見てんだ!ジロジロ人の事見てんじゃねーぞ!」

 

「……なんなのここ。正直、今すぐ帰りたいんだけど」

 

かなり、治安が悪い。ファラザードの裏通りとどっこいどっこいじゃないか?ここ、本当にアストルティア?うわ、さっきのケバい女プクリポ、まだこっち見てる。

 

「ここはプクランド大陸の魔窟アラモンド。びっくりした?説明しとけば良かったね。ごめん。でもね、奥に、超〜〜〜可愛いお店があるんだ」

 

主人公に言われるまま奥に進むと、場違いにカラフルポップに修飾された、可愛らしいカフェがあった。

 

「バズスイーツカフェへようこそぉ〜」

 

「はい、座って座って!何頼む?」

 

テーブルの中央のプクリポ型のメニュー表に目をやる。

ぐるぐるストロベリー♡……、ロールケーキ?ラ、ラブリーレインボーティー、ふわりん★バズコットン?キャンディー……。

は?これ、食べ物の名前?

 

「新メニューのパンケーキ頼もっ!美味しいんだよ!あ、ねえねえ、ラブリーレインボーティー、1個頼んでふたりで飲まない?グフ、グフ、グフフフフ」

 

ヒロイン(?)がそんな顔と声で笑って良いのかね。

 

「やだね。誰がそんな事」

 

当然断る。

 

「え、聞こえなかった~。アレ?今日何の日だっけ?」

 

チッ。こんなの、今日だけだからな!

 

「やった〜。あ、すみませ〜ん!パンケーキ2つと、ラブリーレインボーティー1つお願いします」

 

「ラブリーレインボーティーはおひとつでよろしいですかぁ〜?」

 

「はいっ!」

 

店員は主人公とリソルを見て、「ああ」と納得したようだ。

 

「かしこまりましたぁ〜。ごゆっくりど〜ぞ〜」

 

 ※ ※ ※

 

「天界に源生植物研究所っていう所があってね、そこでマイタウンメダルが出たの!」

 

「へー。何枚?」

 

「1枚」

 

「何枚集めるとマイタウン権利書と交換だっけ?」

 

「1000枚」

 

「今アンタ何枚持ってんの?」

 

「……90枚」

 

「気の遠くなる話だな」

 

1000枚貯まるまで何年かかる事か。

 

「弟に錬金術でマイタウンメダル作って貰えないかな」

 

それは不正でBANされるんじゃない?

 

「そうそう、この前弟がみそぎの水からルティアナの神気を錬金術で抽出したんだよ!すごくない!?」

 

「お待たせしましたぁ〜。パンケーキおふたつとラブリーレインボーティーおひとつです〜。ストロー、こちらご利用になりますかぁ〜?」

 

店員はピンクのハート型のストロー……のような物を差し出した。

 

「はいっ!ありがとうございますっ!」

 

リソルは先程の決断を激しく後悔しながら溜め息をついた。

 

「可愛い〜。そうだ、これ、ふたりでストロー咥えて写真撮ろっ!」

 

「は」

 

「今日の最後のお願い!これで終わりだから!あとはもうリソルの言う事何でも聞くから!」

 

「〜〜〜〜〜ッ!」

 

くそ〜〜〜!本当に首輪着けてやろうか!

 

「は〜い、撮りますよ〜!」

 

カシャッ。

 

「グフ、グフフフ、グフフフフフフ」

 

撮れた写真を見て主人公は気持ち悪い声で笑っている。

はあ、どっと疲れた。もう帰りたい。

 

「あとね、占いもあるよ。すっごい当たるから!やってく?ふたりの相性占っちゃう〜?」

 

「占わなくても分かるでしょ」

 

「え」

 

主人公の顔が真っ赤になった。

形勢逆転で、ここからはオレがいじめさせて貰おうかな。

 

「…………?……?」

 

「……ッ!……ッ!!」

 

 ※ ※ ※

 

とっぷり日が暮れて。

リソルは祈望館へ。

主人公は新エテーネ村へ。

 

「ねえ弟。プクランド大陸の魔窟アラモンドのバズスイーツカフェに行ったんだけどさ、そこのスイーツにニコちゃんみたいなのがついてたんだけどさ、錬金術で何かお手伝いとかしたの?」

 

主人公は村の研究所にいる弟に訊いた。

 

「んーどうだったかな。おいら、数千年漂流してて……。姉ちゃんの事を忘れないようにするだけで精一杯だったから」

 

「そっか……。ごめん、変な事訊いて」

 

「ううん、大丈夫。あ、姉ちゃん、今日は誰といたの?随分ご機嫌みたいだけど」

 

「今日はリソルと記念日デート♡」

 

「デート?!リソル??」

 

「言ってなかったっけ?アスバルの従者」

 

「アスバルって魔王アスバル!?え?姉ちゃん、魔族と付き合ってるの!?」

 

「じゃあね〜おやすみ〜」

 

「ちょっと待って!?姉ちゃん!?」

 

 

 

リソルくんとプクリポ男女当てクイズ★

「ねえリソル」

アスフェルド学園のフウキ対策室の
ソファに寝そべるリソルに主人公が
話しかける。

「何?」

プクリポ男女当てクイズしよーよ」

「はあ?何そのクイズ。あほくさ」

「やりたくないの?ふふ。あ、そっか。
リソルどうせ分かんないもんね」

「分かるし!(確かまつ毛生えてるのが女だったはず……!
それさえ知ってれば簡単簡単……)」

「ではこちらのウェブニーは男でしょーか、女でしょーか!?」

そう言って主人公がリソルに見せた写真は
思いっ切り笑って目がくの字「><」になっている
黒っぽい鎧を着たプクリポだった。

「(よし、まつ毛無い。よゆー)男」

リソルの返答に主人公はしぐさ・高笑いをしながら。

「ブブー!違いまーす!まつ毛で判断したの?
この表情の時は女の子もまつ毛非表示になりまーす!
こんなのも分からないなんてまだまだ半人前だね!
見た目もお子ちゃまだもんね。しかもウェブニーは
昨年のアストルティアクイーンだよ?
バルディスタ兵だよ?魔族なのに知らないの?」

「うっさい偽英雄!!天使達からハブられてるくせに!」

【ネタバレあり】リソルと魔界珍道中♡

「……は?」

予想外の返事に驚きの声をあげてしまう。
タヌキ先輩に「もうすぐふたり、3年記念日ね。リソルくん、お祝いするの、ぜ〜ったい忘れちゃ駄目だからね!」とこの前釘を刺され(完全に忘れていたのでありがたい)、主人公に何をしようか訊いてみたのだが……。
まさか「ふたりで魔界に行きたい」と言うとは。

「悪いんだけど、アンタを花嫁としてオレの館に招待するのは学園を卒業してからじゃないと。任務があるし……」

珍しく困った様子を見せるリソル。主人公はキョトンとした後顔を真っ赤にして違う違う!と慌てて説明した。

「なんだ、旅行したいって事か。……は?魔界に?」

そうそう!と頷く主人公。

「本気で言ってるの!?魔界に?魔界がどんな所か知らない訳ないよね?魔界に観光するような場所がある訳ないじゃん!」

首を大きく横に振って否定する主人公。

「魔族のオレが無いって言ってるのに。魔界に旅行に行きたいだなんて、この世でアンタが初めてだと思うよ」

相変わらずこの人は訳分かんない事言うなあ。
でもひょっとしてこれが大魔王の器ってヤツなのかもね。

※ ※ ※

11月22日、記念日当日。
アビスジュエルでゼクレス魔導国へ。
主人公は……、大魔王だとバレるのが嫌だという事で衣装券でサマーウルフの姿になっている……。
魔物の格好なんかしてたらゼクレスじゃ相手にしてもらえないよ?って言ったんだけど、「今のゼクレスは大丈夫!」って。
オレがいない間にゼクレスってそんなに変わったのか。

主人公はマカイ・マカロンが食べたい!って道具屋にいるマカロン・マカロンのスタッフ、デュルメの元へ。
でも案の定、サマーウルフの姿で「すみません」って声をかけた主人公はデュルメに無視されていた。
まあ、やっぱりそうだよね。ここはゼクレスだからね。
やれやれ、と思いつつデュルメに声をかける。

「ねえ、デュルメさん。マカロン2つ欲しいんだけど」

「これはこれは、現国王アスバル様の従者のリソル様ではないですか!もしやアスバル様がお召し上がりに?」

「いや、あるじの大事な知り合いに、かな」

「さようでございますか!ささ、どうぞこちらお持ち下さいませ!アスバル様に何卒宜しくお願い致します」

「ありがと」

道具屋を出たリソルは主人公に訊ねる。

「で?次はどこ行く?」

主人公はリソルの屋敷!……のそばの民家!と答えた。

「そんなとこに何があるの?」

主人公は行けば分かる、と言って目的の民家に入っていった。

家主らしきウェディの魔族の男性は戸惑った様子で

「やあ……どちら様かな?」

と言った。
主人公はサマーウルフの頭を外すと「あの時お世話になった者です」と言った。

「ああ!マデッサンス・ポップコーンの人だね!今ちょうど、久し振りにポップコーンを作ったところさ。良かったらあげるよ」

主人公はにこにこ顔でお礼を言ってポップコーンを受け取ると民家を出た。

「で?次は?」

リソルの屋敷!……は嫁入りしてから行くから違う所!と言って主人公はアビスジュエルを取り出した。

「この前勝手に入ったくせに」

というリソルの言葉に主人公は「リソルの屋敷だって知らなかったから」と白々しく答えた。

……主人公のヤツ、大魔王になってふてぶてしくなったな。

主人公がアビスジュエルを掲げると綺麗な水辺と不思議な木の生えた見知らぬ場所に着いた。なんだか美し過ぎてあまり魔界らしくないが、遠くから恐ろしげな魔物の鳴き声が聞こえる所はやはり魔界だなと思う。

「……ここは?」

主人公は「ここはラーの広場。私は魔界でここの景色が一番好きなんだ」とリソルに言い、先程手に入れたマカロンとポップコーン食べようと言って水辺に腰を下ろした。
水面が緑や透明や紫に移り変わるので見ていて飽きない。
主人公のトポルの村での出来事を聞きつつお菓子を食べる。

「アンタがラーの果実を食べたらどの姿になるんだろうね?」

主人公は闇の根源からも似たような事を言われたなあと苦笑しつつ、エテーネ村での姿かなあ、と言った。

マカイ・マカロンとマデッサンス・ポップコーンを食べ終わると、サマーウルフの頭を被り直してトポルの村のクラムベリル広場へ向かった。
ここも好きなんだ、とにこにこしながら言って主人公は広場一面に咲いた花を見渡した。そして、「ここのクラムパイ、美味しいんだよ」と言ってリソルにクラムパイを渡す。

「うん、美味しいけど……なんでそんな見てくんの?」

怪訝な顔で訊ねるリソルに主人公はこのクラムパイ、誰が作ったと思う?と訊いた。

「この村の誰か?」

主人公は違いまーす!と大袈裟に首を横に振り、「ヴァレリアだよ」と教えた。

「!?」

まさかの答えにリソルはクラムパイを喉に詰まらせむせた。主人公は大笑いしている。

「ゴホゴホゴホッ!」

嘘なのか本当なのか分からないのが恐ろしい。
主人公だと有り得るからな……。

「あ、あとね、クイズが大好きなリソルくんの為にクイズを考えてきたの」

「へえ。どんなの?」

オレに解けないクイズなんか無……

「ゲルヘナ幻野の廃屋にいる蜘蛛は何匹でしょう?」

「はあ!?何ソレ!?そんなの分かる訳ないじゃん」

どの廃屋だよ!行った事ないし!

「残念!5匹でした」

「フン!そんなへんてこりんなクイズ、解けなくても別に悔しくとも何ともないし!」

「じゃあ次はこれ」と言って主人公がどうぐかばんから取り出したのはアルバムだった。

「はい、ではこの写真にうつってるプクリポは男でしょーか、女でしょーか」

さてはオレの屋敷にあるクイズの本、見たな!?

「ぐ……っ!アンタ、オレの屋敷、隅から隅まで調べたって訳!?」

花嫁ですから当然の事です、とのたまう主人公。
「で?どっち?」と答えを催促してきた。

「チッ!……男」

「ブブーッ!女でした!」

「だあああ!プクリポなんかどっちでも同じでしょ!」

「同じじゃないよ!よく見て!ほら、まつげ生えてるでしょ?」

「こんなホコリみたいなまつげ見えないし!ていうかまつげなんか男だって生えてるでしょ!」

その後も何枚かプクリポの写真を見せられたがことごとくリソルは間違えた。

「そういうアンタは見分けつくの?!」

ケタケタ笑っていた主人公の動きが止まる。

「ワ、ワカルヨ」

はは〜ん。さては主人公も見分けつかないんだな。

「今度オレもアンタにクイズ考えてこようかな。プクリポの男女見分けるコツ、オレに教えてよ」

「ウ、ウン。イイヨ」

今日の分、後で仕返ししてやるからな!

話をそらすように、そろそろ次の場所行こう、と言ってアビスジュエルを取り出す主人公。
ジュエルを掲げて飛んだのはグラデル台地の大魔王顔壁。
自分の顔が彫られたのだという壁の前でエッヘンと胸を張って自慢気にしている。
でもこれ……、兜で顔全然見えないじゃん……。ていうか今、サマーウルフ着てるし。
まあ、素顔が知れ渡ったら変な奴に命を狙われないとも限らないしね。逆に都合が良いのかな。

大魔王顔壁の次は魔幻園マデッサンスの入口、棺桶乗り場へ。
主人公は初めてここを訪れた時からずっとオレとコレに乗りたかったらしい。
絶叫系は苦手なんだけど……と言いながらもいそいそと嬉しそうに乗り込む。
いかにもデートって感じでしょ!?と言ってリソルの顔を覗き込んだ。
うん、サマーウルフさえ着てなければそうかもね。
安全バーをおろすと棺桶の蓋が閉まり、大きな音を立ててレールの上をゆっくり動きだす。
そしてガーッと猛スピードで急降下したかと思うとグルッと一回転したり……なんともスリリングだ。
また乗っても良いかなと思う。そんなに悪くない乗り物だ。

魔幻園マデッサンスに到着し、リソルが先におりたが、主人公がおりて来ない。
振り返ると主人公は棺桶に座ったままぐったりしていた。

「え?おい、主人公?!どうしたんだよ!?」

リソルがびっくりして身体を揺すると、気が付いたのかキョロキョロ辺りを見回した。なんと、恐ろしさのあまり気絶していたようだ。

「大丈夫なの?」

リソルの言葉に頷き、棺桶から出て歩きだす。
「初めて乗ったんじゃないんでしょ?」と訊くと主人公は頷いて、「前はペペロゴーラがめちゃくちゃ叫んでたおかげで気絶しないで済んだ」と言った。

「……よくそれでまた乗ろうと思ったね」

続いて回転木馬に乗ろうとしていたが、振り落とされそうな速度の回転しか無いみたいなので諦めさせた。

お次はバルディア山岳地帯のターボル峡谷へ。
ここは流石に何も無いんじゃない?と思ったら奥に花畑が。
なんだかオレよりも主人公の方が魔界に詳しいんじゃないかという気さえしてきた。
主人公はそこに生えていた青い花を摘むと、「一緒に来てくれる?」と言ってオレに片手を差し出した。
どういう、意味なんだろう。
今日、ずっと一緒にいて一緒にここまで来たじゃないか。
なんて答えたら良いのか分からなくて、主人公の手を取って頷いた。
主人公はアビスジュエルを掲げた。

青い花を持ったまま、次に主人公が訪れたのは、同じくバルディア山岳地帯にある月明かりの谷だった。
なんだか、ひどく嫌な臭いがする。
主人公の後ろを付いていくと、魔瘴で真っ黒になった小さな建物があった。臭いの元はここの濃い魔瘴のようだ。
主人公はちょっとだけ建物の前に立ち止まりかけたが思い直したようで、建物に背を向けて丘にのぼった。
丘には人の手で置かれたような丸っこい岩が何個も、先程見た黒い建物を見守るかのように並んでいた。
岩の前には主人公が摘んできたのと同じ青い花が置かれていた。

「……お墓、なの?」

主人公は小さく頷いた。

「誰……の?」

主人公は膝を付いてお墓に青い花を手向けると、ここでの出来事をリソルに話した。
時折、言葉に詰まったり肩が震えたりしていたから、サマーウルフの被りものの下で泣いているのかもしれない。
この人は、旅の途中でちょっとしか関わっていないような相手の事でも、こんなに心を悲しみに染め上げてしまうのだ。
そんな彼女に悲しい顔をさせないようにする事は困難だろうけど、それでもオレは……。

「……ル。リソル?」

いつの間にか主人公に名前を呼ばれていた。そろそろ、次の場所へ行こうと。

「ああ」

主人公がアビスジュエルを掲げて着いたのは先程とはうって変わって賑やかな砂の都ファラザード。
お腹も空いたしお土産を買わなくっちゃと主人公。
誰にお土産買うのか訊いたら兄弟姉妹にと。

「ん?でも兄弟姉妹って魔仙卿として数百年以上魔界にいたんじゃないの?魔界のお土産喜ぶ?」

「!!」

確かに!と固まった主人公だったが、多分兄弟姉妹はデモンマウンテンからほぼ出てないし?主人公からお土産を貰うのは初めてだし?きっと喜んでくれるに違いない!とリソルに熱弁を振るった。

「はいはい。で?何にすんの?」

主人公は腕を組んでウーンと考えようとしたがグウウウウウ〜とお腹が派手に鳴ってしまい、先にご飯を食べる事にした。

これこれ!これ食べて見たかったんだ〜!と裏通りで串焼きヤモリを頬張る主人公。
リソルも串焼きヤモリを食べながらぼーっと裏通りを眺めていたが、その目にとあるものが留まった。

「ねえ主人公」

「ふぁに?(何?)」

主人公は口いっぱいにヤモリを詰め込んだまま返事をした。

「あそこにいるプクリポは男なの?女なの?」

と言ってリソルはムースちゃんに目を向けた。

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「え"」

(自分の事ムースちゃんってちゃん付けで呼んでるしまつげがあるように見えるから女の子、かな……。ナジーンやユシュカにときめいたりしてるし……。)

「女の子!」

「ふうん……」

主人公が自信満々に答えたのでリソルはつまらなそうに返事をした。
よし、と主人公は胸をなでおろして、また兄弟姉妹へのお土産を何にしようか考え始めた。

お香とか魔剣アストロンの木刀とか食虫植物とかも良いけど……やっぱりジルガモットさん達三姉妹のようにお揃いで身につけられるアクセサリーが良いかなあ……。

という訳で裏通りを出てすぐの宝飾店に向かった。

「アクセサリーショップへようこそ。本日はいかがなさいますか?」

アクセ屋ルイッサに取り扱い商品を見せて貰ったが、兄弟姉妹にというよりヴェリナードのリーなんとかネさんに似合いそうなデザインの物が多く、違う所へ。

ファラザードの入口の近くにいるリシアに声をかけてみる。

「あらいらっしゃい!今ね、ちょうどこのファラザードの空の色のような宝石を使ったアクセサリーが出来たところなのよ。良かったら見ていって!」

見せてもらうと、目が吸い寄せられるような美しい宝石と、それを引き立たせるような草編みのアクセサリーが数種類あり、主人公はその中からブレスレットを購入した。

「まいどあり!また機会があったら宜しくね!」


そしてその日はファラザードに宿をとり、翌日アスフェルド学園の祈望館へ帰った。

「それで、今回の魔界旅行は満足して頂けましたか?大魔王サマ?」

サマーウルフ姿から元の姿に戻った主人公は満足気に頷いた。

「そう。これからも魔界をよろしくお願いしますね?」

そう言ってリソルは主人公の手に何か小さくてかたくてひんやりしている物を握らせた。
主人公が手を開くと、ファラザードの宝飾店で売っていた、リーなんとかネさんに似合いそうなデザインの、ゴージャスなゆびわがあった。

「それを見て、たまには昨日の事を思い出してよ。大魔王サマはこれからも忙しそうだからね」

海賊でハロウィン♡

f:id:historicanozuttomo:20211031180512j:plainコンコンコン。
誰かが部屋のドアをノックしている。

「……チッ。誰だ?」

今、主への報告書を書いていたところだ。
アストルティアは魔界と違って季節毎の行事が毎日のようにある。人間は魔族より寿命が短いくせにどうしてそんなにやる事を詰め込もうとするのか。しかも何の意味があるのか全くオレには理解出来ないような、下らない行事ばかりだ。
だが、主はむしろ下らなければ下らない程喜ぶ傾向があるから、仕方なくこうやって調査している。
この前も、どうでも良さそうだけど一応書いておいた「スイカ割り」が主は大層お気に召してしまったらしく、アストルティアの海へ初めてやって来たにも関わらずスイカ割りをするのだとごねて大変だったという話を聞いた。
その時一緒に他の魔王もいたらしいから、主にはもう少し魔王としての威厳を持って振る舞って欲しいものだ……とリソルは溜め息をついた。

コンコンコン。

再度ドアがノックされた。

「入れば」

来訪者は多分アイツだ。いつもすぐ入ってくるくせに今日はオレの返事を待っていたようだ。

「「トリック・オア・トリート!!」」

元気良くドアを開けて入ってきたのは主人公とタヌキ先輩と……誰だ?
それにふたりともいつもと違う格好をしている。主人公はドクロマークが刺繍された黒い大きな平べったい三角の帽子に山賊みたいな服。
タヌキ先輩は黒い皮の眼帯に同じく山賊のような服。

「ふふ。リソルくんだもん、お菓子なんか用意してないよね。主人公ちゃん、メロチカさん、いたずら開始〜!!」

「「ラジャー」」

「は!?え、おい、ちょ、何す

※ ※ ※

コンコンコン。

「はいどうぞ入って下さい」

この足音は主人公とクラウン先輩と……おや、誰だろう?

勢い良く部屋のドアが開けられてそれまでの静寂が破られる。

「「トリック・オア・トリート!!」」

「やあ。主人公とクラウン先輩と……。ええと、キミは確か……裁縫部のメロチカさんだよね?今丁度お茶していたところだから良かったら一緒にどうだい?焼き菓子も用意してあるよ」

「流石ミランくんね……。どうする?主人公ちゃん」

主人公は首を横に振った。

「個包装されたお菓子じゃないので駄目です!!いたずら開始!!!」

「「ラジャー」」

無理矢理な理由を述べてミランに襲いかかる3人。

「え?一体何を……わ!待ってくれ!キミ達女の子だろう!?じ、自分で着替えるから……ッ!」

※ ※ ※

コンコンコン。

「おっ誰だー?入っていいぜー!」

気のせいかもしんねえけどさっきリソルとミランの悲鳴が聞こえた気がすんだよな。
だから次は俺んとこに来んじゃねえかと思ってたんだ。

ガチャーンと大きな音をたてて開かれたドアの前に立っていたのは主人公とクラウンと……んー、アイツは確か裁縫部の……?

「「トリック・オア・トリート!!」」

「おう!そうだな、今日はハロウィンだな!あー、でもわりぃな、お菓子は生徒会の奴等に全部あげちまったんだよ」

「それではいたずら開始!」

「「ラジャー」」

「ははっ、いたずらって。……ん?うお!?ちょっと待てって!!」

※ ※ ※

「……ねえ、これ、なんなの?」

主人公とクラウンとメロチカの3人の手によって突然着替えさせられたフウキのメンバーが対策室に集合させられていた。

大きな黒い鳥の羽根の付いた、金で縁取られた平べったい黒い三角の帽子と黒っぽいロングコートとハイウエストで腰にバンダナが巻いてあるズボンとブーツに着替えさせられ、ピストルの模型を手に持たせられているリソル。

「さあ……僕にも分からないな」

黒い皮の眼帯と白いウェスタンブラウスと腰にポーチの付いたゆったりとした形の着古した感のあるズボンと茶色くてゴツいブーツを着用し細長い刀身の模造刀を持っているミラン

「ハロウィンなんじゃねえか?」

黒いバンダナに上半身はベストのみ。下は土木関係者が履いているような超幅広のズボンにショートブーツ。両手にサーベルを持ったアイゼル。

「はろうぃん!いつもと違う服!」

「皆さん素敵なお洋服ですね!なんだかこう、動きやすくて闘志がみなぎる格好ですよね。私がいつも着ている服より斧が振り回しやすい気がします!」

ラピスとフランジュもいた。

ラピスは茶色い皮の平べったい三角帽とベストとハイウエストなワンピースとロングブーツを身に付けておもちゃのピストルを持っている。

フランジュは赤茶のバンダナとつぎはぎが目立つ赤いオールインワンとブーツにいつもの愛用の斧。

このふたりの悲鳴は聞こえなかったから男子3人と違って穏便なやり取りだったのかもしれない。

「わしもおるぞ!片目だと飛びづらいのう」

メルジオルはドクロマークの付いた黒い三角帽と黒の皮の眼帯をつけている。

コホン、と咳払いをしてクラウンが皆に説明を始めた。

「今回のハロウィンは特に仮装に力を入れたい、という主人公ちゃんの要望にお応えする為、裁縫部のメロチカさんにご協力を頂きました。ご多忙にも関わらず7人分の素敵な衣装を作製して頂きましてまことにありがとうございました!皆、メロチカさんに拍手〜」

メロチカがぺこりとお辞儀をした。

「仮装のテーマは、バージョン6で実装される海賊でーす!皆超似合ってる!カッコいいよ!せっかくだからこの格好で町へ繰り出してトリック・オア・トリートしに行ってみよ〜!」

「僕は構いませんよ。普段の服とそれほど変わらないし」

「これで行くのか!?俺これじゃちょっと寒……」

「トリック・オア・トリート!お菓子貰う!」

「お菓子をくれないからといってメラガイアーしてはいかんぞ!」

「私こういうの初めてなので緊張します!でも皆さんと一緒なら楽しそうです!」

「アホくさ。付き合ってらんないよ。ま、主への報告書の為に付き合ってあげるけど」

という訳で学園の駅から最寄りのグランゼドーラの城下町へトリック・オア・トリートしに行ったフウキの面々は、その仮装のあまりのリアルさに本物の海賊と間違われて通報され、勇者姫のアンルシアが退治しに向かったとか向かわなかったとか。

※ ※ ※

「よくメロチカって裁縫部員がこんな下らない事に協力してくれたね?あの人って確か、学園中の女子にエッチなしたぎを作って配るとか言って超忙しそうだったじゃん」

ああ、それはね……とメロチカの元へクラウンとふたりでお願いしに行った時の話をリソルに説明する主人公。

※ ※ ※

エッチなしたぎ作りで忙しいので無理だと断ろうとするメロチカにクラウンがとある交換条件を提示する。

「今なんと?」

「ええと、その、だからね、その時に私達4人が海賊の衣装の下に着るってのはどう?」

「プロ並みの料理の腕前を持っていると噂の3年のクラウン先輩と学園のマドンナの2年のフランジュさんと学園一の魔力のピンクシュガーデビルの1年のラピスさんと伝説の転校生の主人公さんが私の作ったエッチなしたぎを着てくれると言うのか!?」

「う、うん」

「是非やらせてくれ!!」

※ ※ ※

「そんな条件でねえ……。じゃあ今アンタ、その下に着てるって事?」

しまった、という顔をする主人公。

「へえ。それならさあ、

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胸痛

(※主人公とリソル付き合ってません)
(ちょっとピュアめなリソルくんです)
(※いつものお話とは世界線が違うお話)

「今思うと、地元の夏祭りって若い学生達の為にあったのかなって。
好きな人を誘う勇気なんかないけど、お祭りで会えるかもしれないって思いながらお洒落して。
あの人はどんな服着てくるだろう?誰と来るんだろう?
不安と期待で胸をいっぱいにして慣れないヒールや浴衣で祭りの会場を端から端まで歩くんだ。」

なんだそりゃ。
好きな奴がいるなら誘えよ。
ソイツが他の女と来たらどうするんだよ。

夏祭りの資料として図書室から借りてきたその本を投げる。

……こちとら誘いたくても誘えないってのに。

リソルは深い溜め息をついた。

先日、たぬき先輩がフウキの皆でグランゼドーラの夏祭りに行かないかと提案してきた。
学園の駅から乗換なしで一本で行けるしと。

いつもなら「いいね!行こう!」という流れになるがこの時は違った。
おバカ会長が主人公の方をちらっと見て

「悪ぃけど先約があってよ」

と断ったのだった。

主人公も「その日はちょっと用事があって」と断り、オレもアイツが行かないのなら、と「オレもパス」と言って断った。

残りのメンバーで行こうかたぬき先輩は少し悩んでいたが

「未来のアラハギーロ王が女の子3人とハーレム状態でお祭りに来てたらまずいかな。やめとこっか」

と言って諦めた。

そんなやり取りがあった後に主がどこからそんな事を聞いてきたのか

「今度グランゼドーラで夏祭りというものが開催されるんだって?リソル、ちょっと調べて来てよ」

と手紙を寄越してきた。

祭りの浮かれた空気の中をひとり任務で彷徨わなきゃならないのかと思うと頭痛がしてきたが、主の命令であれば断れない。
なんとなく嫌な予感がしていたが仕方なくリソルは駅のホームへ向かった。

※ ※ ※

グランゼドーラの祭りは勇者姫の地元というだけあって盛大で華やかだった。
その賑やかさでひとりでいる孤独が余計に際立つ居心地の悪さといったらない。

そんな中、よく知った気配を感じた。

へえ……。アイツも来てるのか。

グランゼドーラに来る前に読んだ本の内容を思い出す。

アイツもめかしこんで来てんのかな。
アイツの勝負服、どんなのだろう。
想像すると笑ってしまう。

どうしてか、是非見てやろうという気持ちになってしまって感じる気配を頼りにアイツを探す。

よし、この辺だな。
さあ、アンタの勝負服、見てやるよ。

果たして、リソルは主人公を見つけた。主人公は白いTシャツにジーンズと白黒のスニーカー。
そしてその隣には長身でがたいの良い赤い髪の男……アイゼルがいて、主人公と同じ服を着ている。

勝負服にしちゃ随分ラフだけどこれはペアルックだかおソロコーデとかいうやつか……。

!?
なんだ!?
胸が締め付けられるように痛い!
息が苦しい!
呪いか!?
しばらくアストルティアにいて何事もなかったから油断していたが魔界から刺客が送り込まれていたのか!?

突然の胸の痛みに混乱したがやがてハッと気付く。

ああ、これは呪いなんかじゃなくて……。

リソルと夏祭り〜花嫁は金の亡者ver.〜

夏。
何もしてないのに汗が
やたら出てくる夏。
暑い、としか言いようがない。

暑いってだけで不快なのに
存在があつ苦しいおバカ会長が
なーんか面倒臭い事を言ってるよ……。

「リソルも行くよな?」

大きな溜め息をついて
「そんな友情ごっこに付き合う訳ないだろ」
って断ろうとしたのに聞いちゃいない。
なんかいつの間にかオレも行く事になってる。

「よし!今度の日曜夜7時に
アズランの駅前に集合な!」

「あ、フランちゃんとラピスちゃんは
私が浴衣着付けてあげるから1時間早く来れる?」

「いいんですか?はい、大丈夫です!」

「……ゆかたでおまつり!」

「風流じゃのう」

「せっかくですから僕たちも甚平を着ていきませんか?」

「おお、そうだな。そうしようぜ!」

オレが断ろうとした理由はもうひとつあって。

「主人公ちゃんも誘えたら良かったのにね」

「シュメリアちゃんに訊いたらよ、
主人公、忙しくて最近学校休んでるんだとよ」

そう。主人公がいないのだ。
主人公に逢えないのにこいつらと
休みの日にまで顔を合わせるハメになるとは。

※ ※ ※

そして日曜の夜。
アズランの駅前で待つリソル達3人を見つけて女性陣3人が駆け寄る。

「あら、3人とも早いね」

「お待たせしてしまいましたか?着慣れていないもので手間取ってしまったのですみません」

「いえ、僕たちも今着いたばかりですよ」

「よーしこれで全員揃ったな。俺、腹空いちまっててよ。焼きそばとか食いてえな」

メラゾーマやきそば、あそこ」

「お、サンキューラピス!」

ラピスが指差す方へアイゼルを先頭に皆続く。
ふと、よく知っている気配を感じた気がしてリソルは立ち止まって辺りを見回した。
が、いないようだ……。気のせいか?

メラゾーマやきそばを沢山食べたら私でもラピスさんのように強い魔力が得られるでしょうか」

「これは確か、一時的に少しだけ魔力が上がるものだったと思います。なので流石にラピスほどにはなれないと思いますよ」

「うう……、そうですか。残念です……」

「フランちゃんには魔法がなくてもオノがあるじゃない」

「そ、そうですよね!オノを扱うには筋力をつけないと。やはりここは……唐揚げを食べるべきですよね!」

「からあげ、あっちにある」

「ありがとうございます、ラピスさん!」

唐揚げの屋台へ向かうフランジュの姿はまさしく猪突猛進だ。

「フランジュの向上心は素晴らしいのう。ラピスもフランジュを見習ってメラゾーマ焼きそばを食べんか」

「イヤ。クレープ食べる」

「全く甘い物ばかり食べおって!」

「まあまあメルジオル。お祭りの日ぐらいいいじゃないですか」

「聞け、ミラン。こやつはな、ここに来る前もアクロバットケーキを5個とゴージャスクッキーを20枚食べておるのだぞ!」

「成長期だしそんなもんだろ?俺だってグランドタイタス丼2杯にパワフルステーキとニンニクぎょうざ食べてきたぞ?」

アンタたちふたりともバケモノだよ、とかいつもなら言う所だが。
さっきから気になって仕方ない。
この気配は……、間違いなくアイツのはず。
お祭りのお誘いの手紙を送ったけど用事があって行けないって返事が来たとたぬきセンパイがしょんぼりしていたのに。

「……おい、リソル聞いてるか?」

アイゼルに肩を叩かれて我にかえる。

「腹でも痛いのか?さっきから静かじゃねえか」

「アンタと一緒にしないでよね」

「なんだいつも通りだな。お、見ろよ。ミスアズラン浴衣コンテストだってよ。お前ら出たらどうだ?」

アイゼルが女性陣を振り返って言った。

「え!?いや、あたしはそういうのちょっと」

「ミスコンなんて畏れ多いです」

「みすこん……てなに?」

「……賞金100万G!?ミスコンにしては高過ぎませんか!?」

道端のコンテストの看板を見てミランが驚く。

「す、すげえな。こりゃとんでもない浴衣美人が出場してくるかもな。観てみようぜ!」

「開始時間はもうすぐですね。場所は宿屋の方だそうです。行ってみましょう」

ミスコン会場の方へ進むたび、アイツの気配が強くなってきた。
まさか……?

賞金が高額なせいもあってか、会場は大変混み合っていた。リソルの背ではステージがほぼ見えない……。
それでもマイクの音声は聞こえる。
コンテスト開始の挨拶が終わり、出場者の名前や職業などが司会者によって読み上げられた後、数分間の出場者のアピールタイムが始まる。
続々と出場者が紹介されていく中、フウキのメンバーに馴染みのあるとある名前が読み上げられる。
おっ、とアイゼル達も声を上げるが、そこに現れたのは知らない女性だったようで「そりゃそうだよな」と笑った。
その女性は「普段はアストルティアを救う冒険をしています」と自己紹介をしたが会場の皆は冗談だと思って笑っている。
いやいや待てって!
堪らずリソルはアイゼルによじ登るようにしてステージのその女性を目にとらえた。
やはり間違いない!アイツだ!
アイツは学園では魔術によって姿を変えていたがオレには分かる。

「ちょ、オイ!なんなんだよリソル!」

アイゼルがリソルを引き剥がそうとした時、アイツと目が合った気がした。
アイツは一瞬白目を向いた後物凄く引きつった笑みを顔にはりつけ舞台袖に引っ込んでいった。

※ ※ ※

「オレ用事あるから先に帰ってて」

ミスコンも終わり、祭りももうすぐお開きになるので駅に向かおうとする中、リソルはそう言い残して皆と別れた。

「……主人公」

リソルに声をかけられたその人物は驚いて飛び上がった。

「え、あの、どちら様でしょう……?」

バレないと思ってるのかシラを通そうとする。
リソルは大きな溜め息をついて主人公を睨む。

「馬鹿じゃないの!?オレがアンタの事分からないとでも思ってるの!?」

「え、あ、はいすみません」

「何してんのさ。オレ達の誘いを断ったくせに」

「えーっとそれは……」

しどろもどろ主人公が話しだす。

今主人公は2億Gのマイタウンが欲しくて金策をしているのだとか。
そしてこのコンテストの賞金に目が眩んで参加したのだそう。
たぬき先輩の誘いを断ったのは参加するのをフウキの皆に知られたくなかったから。

「ふうん。へえ。そうだったんだ。ミスコングランプリになれなくて残念だったねー」

主人公は無念そうにうめき声をあげた。

「今回はアンタの無様な姿が見れて面白かったから許すけどさ、今度からはオレ達の誘い断らないでよ。アンタがいないのにフウキの奴らと過ごすなんてオレはまっぴら御免だからね」

主人公はなんか変な声をあげている。

「祭りの報告書なんて主も喜ぶだろうしね。あ、浴衣の構造についても調べておこうかな?」

主人公はさっきとは違う変な声をあげた。

めでたしめでたし。

リソルと2年記念日♡

11月22日!
今日でリソルと恋人になって丸2年。
リソルが帰って来ている頃合いを見計らって
勢い良く祈望館のリソルの部屋のドアを開けた。

「……何?」

テーブルに向かい何か書いていたリソルは
ペンを止め、やかましいなぁというように主人公を見上げた。

…あれ、もしかして今日が何の日か分かってない?

自分とリソルとのテンションの落差に気付き落胆しつつ、
「オルフェアでケーキ買って来たから食べよう?」
と言ってリソルにケーキの箱を渡す。

「ん」

リソルは箱を受け取りテーブルの上を片付けた。
主人公は片付いたテーブルの上にコーヒーを
ふたり分淹れて置いた。

「……ねえアンタ、ケーキの箱振り回してきたの?」

「え」

あー、やっちゃったかなあと思いながら
箱を恐る恐る覗くと可哀想な見た目になった
クロバットケーキがぐったりしていた。
あー、やっちまったなあ…!

「お腹の中に入っちゃえば同じ同じ!」

「…はいはい」

主人公といるとこんな事はしょっちゅうだ。
始めの頃は「なんて間抜けな奴なんだ」と
心底呆れたりもしたが、
今ではこのぽやぽやっとしたところが
世界を救う盟友の重責とのバランスを
とっているのかもしれないなと思う。
そばにいると自分のかたく閉じた心が
開かれるような、そんな気もする。
えーっと…つまり、変な奴って事。
主人公ほど変な奴もなかなかいないと思うね。

「…怒ってる?」

いつの間にか主人公がじーっとこちらを見ていた。
いやいや、今さらこれくらいの事で怒らないから。

「怒ってないって。ていうか主人公こそ怒ってない?」

「…別に」

どうやら怒っているようだ。
のほほんとした主人公が怒るなんて珍しい。
ここに来るまでは元気良く
ケーキの箱を振り回してたみたいなのに。
部屋に入ってから今までの間に
主人公が怒るような事があったか?
…ああもう、女って面倒くさい!

部屋に椅子が1つしかないので
主人公はケーキを片手にベッドに腰掛けた。
いつもならリソルも並んで隣に座るが、
普段と違う様子の主人公をよく見ようと椅子に座った。
だが見た目は特に変わりはない。
…はぁ、一体何なんだよ。

「今日………………だよ」

小さい声で主人公が言った。
小さ過ぎて聞こえない。
今日が何だって?

「え?何?」

「今日で付き合って2年だよ!
リソルは何とも思わないんだね。
覚えてないんだね。
大事じゃないんだね…」

それで怒ってるのか!
記念日ってやつか。
タヌキ先輩が絶対忘れるなってうるさく言ってたやつ。
去年はどうしたんだっけ…?
いやそれは今どうでもいい。

「そんな事で怒ってたの?」

「そんな事…?」

リソルの言葉に主人公が悲しみの色を濃くする。
リソルは椅子から立ち上がって主人公の隣に座った。

「オレにあと何千年愛されると思ってるの?
たった2年で騒がないでよね」

「せん…」

主人公は顔を真っ赤にした。

「でも私、百年くらいで死んじゃうし!」

「アンタの事、簡単には死なせないよ。
それに忘れたの?
死んでも愛してやるって言ったでしょ」

口をパクパクさせる主人公。

「顔にクリーム付いてるよ」

リソルは主人公の顔に手を伸ば…さずに
顔を近付けてきた。

「え、あの、ちょ」

直に!?わあああああ!!?
ていうかそこにはクリーム付いてないよね!?

主人公はパニックである。

   ※ ※ ※

リソルは主人公から顔を離すと
ニコッと笑って言った。

「ホント主人公には飽きないよ。
これからもよろしくね♪」